17.運営 ゠ 国を束ねるには何を要するか
17.運営・前 ゠ 国力と国策の話
「しかし、なんだ。そこまで考えれなければ、王とは務まらないものなのか」
それで私が感慨深げにそう漏らすと、少女はそれを受けて微笑したが、つづけてこうも説明を始めた。
「どうでしょうね。やり方はいろいろ、有るとは思いますけど。ただ、国を治めるんならその内外のことは、全部判断できなきゃあ
「それは当然、そうだろうな」
「ただ、全てを判断するんなら
「ふむ。いや、実はな」
「はい?」
言おう言おうと思っていたことを、到頭ここで私は言ってやった。
「魔王軍には
「あら。そうなんですか?」
「結局、お前なんだな? 全部を指揮している、と言うからには」
「ああ……そうですね、それはそういう事に、なるのかもしれません。その話は知りませんでした」
「やはりそうか。だとすれば一つ、とっても重要な話をしなければならないんだが」
「え、はい。なんでしょう」
「積年の恨み、というものが
「……え……あっ」
そうして
「
「あっ、痛っ、やめっ! 痛い痛いですっ! あっあっ、やめっ痛っ!」
小さなその頭を
「
「ごめんなさい
心の底から満足できたので私は解放してやるが、加減もしたし、少女はその痛みにと言うよりも、
なにやら恨めしそうに、うーうー
「……私は、招くべからぬ客を招いてしまったんでしょうか……」
そんな事を言っていた。
いや、なんだ。
こうなれば私が敗北したかどうかなど、
ただ、それはそれとして。
またも今、少女は気になる言葉を
そこへ突っ込みを入れてみる。
「いや、研究にまで、直接指揮の必要性が有るのか?
「あ、それなんですよね」
そう問われれば、少女は急に元気を取り
いや本当に素直というか、無邪気なんだよなあこの魔王。
邪気のない魔王とは一体、どういう事なんだ。
まあ別にどうもこうも
「研究って、どうしてかいちばん軽視されがちなんですけど、私は国策のなかじゃあ
「それは、どうしてだ?」
「まず、国が健全であるには、国力を保つことですけど。国の実体って、つまり国民なんですね。この魔界って土地でも、この私って君主でも
「そういうものか。私は国の運営というものを知らないから、そういう視点にはどうしても立てないでいるんだが」
「あ、そうなんですね。でもこれって国だけじゃあ
「つまり国民を
「そのとおりです。
「逆説か、
「はい。お
「なるほどなあ。実力主義だとか成果主義だとかで、それに納得しない者は大勢いるんだろうが」
「ああそれ。その評価って人がするんですから、観察眼や先見性に左右されますし、
「む。そこは言わない約束だ」
「ふふ」
言ってくれるじゃないか。
そう思うも、ちょっと
「
「まあ人道的な話では
「どうでしょう。ただ、乱暴に説明してしまうなら、
「ああまあ、それが
「最低限の水準は、もちろん有りますけどね。でも、高望みしなければそこまで困らない、って所だけ確保できれば、それ以上の
「
「欲の制御もまあ、難しい話ですけどね。でも国交って
「それはそのとおりだ、じつに
「ええ、とりあえずって感じで敵を作るのは、当たり前に
「当然の話だな。その当然が
「ですね。
「なるほどしかし、
「……そこは言わない約束で」
それでまた
まあ少女の始めた戦争自体にも、当然ながら理由が
余計な茶々だったかもしれないが、それでも一瞬弱った少女のその様子がお
うむ、
夜だがな。
私のそんな気配を察してか、少女の弱った表情が難しそうなものに
いや退屈しないものだが、かるく
「もちろん、攻められたら応じなきゃあいけませんし、脅しを掛けられて不平等条約を強いられたりもしますから、抑止のためにも軍事力は
「言われてみればそうだな。人界でも弱小国はふつうに生き残っているし、排除しようと
「はい。強国だって
「程ほど、か」
まあ、
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