15.面倒・後 ゠ 伝達と真理の話
まあそのように、
世が面倒くさいならば、世の人は面倒くさがり。
だから結局、
かといって
人の単数と人の複数は、完全に別物。
それが兵だろうが頭脳だろうが、多数が一体として動くには一体化させるため、
なのに、どうして。
千の頭脳が有ったとしても、
千の判断を精査するは、
千の頭脳に任せてその精査を放棄しようものなら、そのまま千の方向へと
一の英雄に加えて千の軍勢も
結局私は、
「……あら。また何か、いろいろ有りましたか? 今度はまた随分、
「いや。まあな」
私のそう考えるが再び、表情に
少女からそんな指摘を受け、私はすこし、笑って
そんなふうにやや
「話を理解できないのは
「だが、理解しないまま意見などすれば当然、的外れになるな」
「それで口を出されても迷惑でしかないんですけど、いくら説明してもそれすら理解しようとしません」
「それどころか、手前が理解できないのは相手が間違っているからだとか、相手が論破できないのは手前が正しい主張をしているからだとか、飛躍が有ってなんの説明にも成っていない事を、正当な根拠として本気で
「話が通じたら通じたで、今度はさっき言った理由でやっぱり
「そういう連中はもう、
「って言うより私は、こんな事を考えてしまうんですね」
「何をだ?」
「
「なるほどお前は、良いことを言うな。あれに
「何でもかんでも考えを統一する、だなんて事が意思
「そうだな。意見が合わないとなったら、その部分では距離を置くのも意思
「つまりはお互いの意思を理解し合う、尊重し合うって事のはずですよね」
「そこへ、相手を自分の意思に染めることが意思
「愚茶ぐちゃになります。だから大事な話ほど、話の
「それはそれで、その場へ
「
「もう言葉は
「そうなんですよね。困ったものです」
なんとなく、答え合わせが弾んだものである。
それで気分もなんとなく弾んだ私は、
意気投合とは、こういう事こそを
「しかし、なんというか、あれだな」
ただそこに私は、若干の不思議をも感じたりしたものだ。
それをそのまま、少女に
「はい?」
「お前とは妙に、話の合う気がするな。私は天使で、お前は魔王だというのに」
すると少女はまたすこし
こんな答えを返してくる。
「まあ例えば、人の数だけ考え方は有る、とは
「実体は、
「はい。あ、それですね」
そう言って少女が
「判?」
「ええ。それってとりあえず、
「まあな。見てのとおりだ」
「
「ああ、確かにそうだ」
「その
「めくらまし」
「はい。何かについて、良い面と悪い面を探してみよう、って感じの切り口で理解を
「ふむ。面倒でも全部を
「そうですね。要するに本質の前には、視点に類する物はなんら意味を持たない。北から魔族が
「視点に意味は、無い」
「まああの、
「
視点に意味は無い、とは
しかし確かに、ひとつの材質でできた石は、正義漢が割ろうが悪漢が割ろうが、半分ずつに割るなら重さも半分ずつだ。
そこに差は
つまりは考え方に個々の差が有ったとしても、その差は突き詰めてみれば最終的に意味を成さない、というわけか。
これは
いやどうも、深い所を
この少女の言う事には、つねに大筋で
ただそれは、どうもこの少女ほどの
本当に一体、どういう頭をしているのか。
そうは思うが、そんな困惑を私が持て余すのも
「結局、頭脳の
「ああ、
「ふふ、あれですか」
「まあ集団に属してしまえば、そこでの考え方に依存してしまって、自主的な判断をしなくなったりするかもな」
「はい。ちゃんと考えた結果で一致するんならいいですけど、大抵は同調圧力に押されて、持ち前の判断基準が
「そうだな。私も多数決は、
「ええ。検証精度を高めたいんなら、必要なのは議会じゃあなくって参謀ですし。そもそも複数の意見を
「ふむ。そう
「ふふ。それに、一本の
「それもだな。本当に
「はい。だからやっぱり、頭脳はひとつだけ、ってことに
「つまり、まずは聞かん坊の締め出し。そしてどう取り
「はい。頭脳を複数持つ生き物がぜんぜん見当たらないのって、重要な局面で衝突起こして身動き取れなくなって、生存競争に敗れたからなんだって思いますよ。
「なるほどなあ」
少女のその言葉は、組織の司令塔は頭脳、その末端は脚。
そう
さらにこれは、道を誤らなければ
これに私が持てたのは、見事、という感想
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