16.判断 ゠ 尺差しはどうやって選ぶか
16.判断・前 ゠ 教育と反省の話
「しかしまあ、それでもな」
「はい?」
いろいろと説明はしてもらったし、十分に納得の
しかし、まだ疑問の解消に至っていない部分は、いくらか残っている。
私はさらなる説明を求めて、少女を
「やはりお前のそのやり方では、全てを自分で指揮するというのはさすがに、お前の苦労が絶えないのではないか? 人も成長しなかろうという問題だって、結局そのままのような気がするんだが」
「あ、はい。そうですね」
情報量の多い言葉にしかし、これといって詰まること無く、
どうだろう。
この少女、私とこんな会話をしておらねばならない、そんな必要性など特段無いはず。
それでいて、ここまで言葉数が多いというのであれば、だ。
つまり
「
「ううむ。聞いただけでも、
「ええまあ。あと、判断をさせないって事は、判断の余地があるような指示を出しちゃあいけない、って事ですし。私だけしか判断しないんならその責任、失敗の収拾も私だけが、
「ああ、それだ。そういえば関係ない話になるんだが」
「はい、なんでしょう」
「お前の言うように問題の責任を取るとは、その影響を一掃して、
「の、はずですね」
「だからその責任者に、責任取れないなら辞めろと
「ふふ。それってあの、女性を不用意に
「使い方の分からない
「どうでしょうか。その安全の保障は、どうやら難しそうです」
「
「
また妙なところで意気投合し、笑い合うが、きれいに話が
ちょっと済まなそうに少女へ
受けた少女は、なんともないと言うように
「結局、組織も指揮系統も、つねに不安定なものなんですよ。
「本人の向上心次第だろうが、まあそういう事も有るだろうな。つまり、細かい事を
「はい。まだ当てる
「ふむ」
「むしろ
「む。まあいろいろと、書院の書を読み
「そうでしょう。それにその、向上心ですよ。そもそも一向に
「それはそうだな。しかしお前だって
「そんなの
「ふむ」
言われてみれば、
あの女侍従と
それはつまりこの少女も、自身に抜け目が存在することを認めていて、かつ
これ以上
「確かにそれは、そんな感じはするな」
「あら。そうですか?」
「まあお前の決裁に対して、こうして私が判を
「ふふ。まあそういう事も、
「
「あら。
「お前な」
「えっとそうですね、
「
なんだこれは。
上意下達も下意上達も、ぜんぜん
そして
さあ果たしてこれを、どう始末してくれようかと
まあこうして冗談で済ますのなら、特に心配は無い、というのが私の質問への返答なのだろうが。
ところで、言われたことを受け入れるとは、
しかしそれは、逆の事であるように私は思う。
自らの未熟さを素直に受け止めるに足る、自らの
そういったものの
つまり、それが
そうも言うことが
こういう所は敵であろうが何であろうが、素直に
またこれに、敵を
そう勇ましく言ってのける者も
だいたい、敵の能力を分別しないほうが無分別であろうし、実際に
目の前の事実から目を
その
「それから、間違いを自分で検出できる方法、っていうのもちゃんと有ったりするんですよ」
「ほう。それは便利そうだが、信頼性のほどはどうなんだ?」
「そうですね。まず取っ掛かりとしては、
「おてがみ?」
「はい。たとえばですね」
そう言った少女、新たな白紙を敷いては筆を取ると、墨を
もちろんそれは
「こんなふうに、字が
「
「でも厳密にはそれって、墨が多すぎたんじゃあなくって、墨を多く
「ふむ。基本だな」
「それでですね。実はこの基本って、ほかのどんな事でもまったく同じなんですよ」
「同じ?
「はい。どんなに難解で高度に
「統治までもが、か? 本当にそんなものなのか?」
「はい。それでその、間違いを検出する方法なんですけど。前提として現実にどういう状況が
「ほう、起承転結とはな。文章を組み立てる場合での基本、というところで耳にする
「いえまあ、これって実際、文章の組み立て方って
「はあなるほど、そういう事か」
「それを今の例で
「ああ確かに、その四つのうちどれを欠いても、何を言わんとしているかが
「はい。そうやって問題が見つかったら、その内容をまた
そして今度には適切な加減で墨を吸い、
紙の上にはやや達筆めに、
「こんなもんですね」
「ふむ。
「書いてばっかりですし、慣れはしますよ。まあそんな感じにですね、全体をどんどん細分化する分割統治法をくり返せば、問題点の
「分割統治法、とな。あれだな、考え方としては軍の指揮構造にも、似た趣きが
「あ、そうかもしれませんね。問題を細かく切り分けちゃえば、対策を考えるのもそう難しくは
「そうだなあ」
言われて思い当たる。
たとえば剣の振り方ひとつを直すにしても、まずは全体を
判断違いをしたと思ったときに、どこを間違えたかと
まあ、分割統治法、などという
意識的に
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