11.懇願・中 ゠ 勧誘と逼迫の話
少女の案内をとにかく聞いていろ、という要求なのだとだけ理解し、無理やり会話を次へと進めてみた。
「いや、ふむ。まあ私に、何を判断させるつもりなのかは知らないがな。つまりそれが、私を
「はい。ほかにも理由は、そうですね……大まかにあと二つ、
「なんだ、まだ二つも
「そこはまあ、勝者の特権って事で大目に見てください。うち、ひとつとしては
……。
「なん、だと」
理力の発現物は、作り手から離れると消失する。
だから剣そのものの貸し出しなど
魔族側にもそれくらいは、知られているはずだ。
となれば……つまりその意味は、限られている。
──ジリッ。
緊張が走った。
「私に、裏切れ。と?」
こんな話には、さすがに私も穏やかで
対して、しかし少女は
「そんな事はいくらなんでも、言いませんよ。白状すれば、天使軍の他にも敵はいるんです」
「あ、ああぁぁあっとおおぉキュラト様あっ?」
そうして今度、慌てたのは女侍従のほうである。
いや、それはそうだ。
こんな情報が敵に渡れば、それを利用した策が
あるいは秘密
本当に私が聞いてしまって、いいのか。
それと、もうひとつ。
天使軍の他に敵がいるとしたなら、それは果たしてどんな存在なのだろうか。
天、人、魔のうち天、魔が争っているのが現状だから、ほか残っているのは人族だけだ。
彼らも別に無力であるわけでは
とはいえ、人族でも
そんな存在が、どこかに
私が考えている、その間。
小さい
「リテローン。
「えっと、はい……まあ、そうなんですけれど……」
ぽふぽふの
どうにかその説明で、女侍従は納得しようとしているようだが、しかしこの少女。
「おい魔王、一体どういう事だ? 神族でも人族でも、魔族でもない者どもが、世に君臨して
女侍従へと伸ばしていた、その手を引っ込めてはそのまま、自身の側頭部をかしかし
その髪の毛からは、例によって
「何といいますか……魔族って
「魔族? お前の
「それが、同胞ってわけでも
「うん?」
「仮にいくつか、種族が複数存在するとしますよね? それで
「ああ」
「後の
なんと。
やはり天、人、魔の三種族の
敵が別途いる、そう言うなら確かにそれ以外考えられない話ではあるが、それにしてもこれは初耳、新事実だ。
「つまり
「そういう事です。私たちの魔力と同じような力を持ってるみたいですから、差しあたり魔族って呼ぶことには
「なるほど。しかし魔族に二種類あるというのは、どうも
「そうですね、第
「ふむ。悪くないな」
「まあそんな呼び方より、その新魔族ですけど。これがまた暴力的で
「それなら
「いえ。残念ながら、そちらは」
これはまた、
そんなでは
「天敵、か」
「
「しかし、な。そんな相手に私の剣一本が加わったところで、どうにかなるのか? 少なくともお前のほうが、強いだろう?」
「細かい話は、その
「まあそれもそうだが。私を
「いえ。これといって、無いんですけど……それでも私は、
また言ったな。
この強烈な自信は一体、どういった
そんな事を頭の中で
「あ。あ。キュラト様」
「はい、なんですか?
「そうです。もう話しちゃいますけれど、丁度その例のあれの報告ですよ」
「何か変わりが?」
「まず一つ。熟度が、第
「そうですか。それなら
「それが、そうも行かないみたいなんですよう」
「……はい?」
「もう一つ。熟進が、例にみられないくらいの速さに変わってしまったそうです」
「っえ……」
「くわえて、その速さには揺らぎも有って、熟了いつになるかが皆目、読めなくなったと」
「……そん、な」
「ただ、
「……」
これを聞かされた少女には大変な
「んん……はあ、参りましたね……まったく今度のは本当に、異例ばっかりです。……ああもう、まだなんの準備も、ああ……ああー……」
この女侍従が、それほど重大な事を告げたのか、どれほど重大な事を告げたのか。
私の知らない単語が使われている以上は、理解する
なんとなくはその、熟了と
だから、説明が
特大の
「ん? おい、どうした」
「キュラト様?」
「事態が
──スッ。
そう言った少女は、こちらへ
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