11.懇願 ゠ 信じるものを見つけれるか
11.懇願・前 ゠ 衝突と案内の話
「あ、キュラト様。丁度よかったです」
魔王の本宮ともなれば、それなりに広さの有るものらしい。
その魔王本人とふたり連れ立ち、ともに無言のまま廊下を行ったり、ひとつふたつ階段を昇ったりすれば、その
まあ、その状態で少しでも機密性を確保する目的か、入口上部には人胸ほどまでに、
そしていま実際に、一名の女侍従がこれを
「リテローン。何か有りましたか?」
「それが……っあ。そ、そのう……」
リテローンとよばれたこの女侍従、
顔に
若さゆえの快活さよりは、むしろ物静かで内向的と、そのような気質を感じさせられる。
その
そんな彼女は、少女の連ねる私に気づくと、何かを少女へ伝えようとしていたその声を控える。
「キュラト様。こちらの方は、
「ええそうです、
「……」
そんな様子に気づいているのかいないのか、少女は質問をする。
「何についての用件ですか?」
「あ、いえその、あのあの……この方の前だと、ちょっと……」
女侍従は
そして、少女がそれを一体どうするのかと見守っていれば、その会話はこちらが
「大丈夫ですよ。話してください」
「いえでも、この方は……」
「私が大丈夫だって判断したから、この
「……しかし」
「大丈夫って言ったら大丈夫ですよ。口で伝えにきたんなら、急ぎの用件なんですよね? 早く話してくださいな」
「……」
「どうしました?」
「……」
「え。どうして黙ってるんですか?」
「……あ……そ、の……」
「ええと、リテローン? 何も言ってくれないと
「……」
「あの、お願いです。何か言ってください」
「……」
「リテローン。そういう態度を取られると、さすがに怒りますよ?」
「……う、え……っと……」
「はい?
「……」
「一体どうしたって言うんですか……困りましたね」
「……」
いやはや、これは、どうも。
「おい魔王」
敵の内情などに口をはさむ
黙っていれなかった。
「え、はい?」
「部外者の私が差し出るのも
「い……え、
言われて、少女は
困っているのは自分のほうだ、そう考えているなら当たり前の反応ではあるが、べつにそれで
「もしかして自覚が無いのか? おそらく、機密に類する内容なんだろう? それを敵に
そう言った私を女侍従が、まるで
いやまあ、まったくその言葉どおりではあるが、それは
逆にその首領のほうは、指摘をされて初めてそういった事に思い至ったらしく、おおいに動揺した。
「それは……いえ、あっと……」
「そうして何も言えなくなってしまった相手に、どうして黙っているかだの、果てには怒るだの困るだの、そんな無体が
「……」
そこまで言われて、
女侍従へ頭を下げる。
「ごめんなさい、無神経が過ぎました。
「あーいえあの、
その言葉に、女侍従はかえって恐縮したようだが、表情としては
これは、
だとしたなら、それほど心配するような事でも
私は提案する。
「見ればそんな、せまい
「いえ」
それはそんなに不合理な意見では
そして、よく
「
「知っていて、ほしい?」
私が話に
「リテローン、そういう
「目的……」
「私が大丈夫って言ったのは、
「……はあ」
「それに当面、この人には私から離れないで、
「んんー……
まあそれは、了解したと
「でもその、目的って
まあそれは知りたい。
私も知りたいし女侍従も知りたいようだから、ふたりして耳を
しかし今度は当の少女のほうが、なにやら対応に困っている様子である。
悩ましげに首を転がしつつ、女侍従と私を
「どうした?」
「それは、その……どう言ったら良いんでしょう。それについてはちょっと、
「それはまた、言葉が
「そうじゃあ、ないんです。知ってもらう事そのものが目的だから、それ以上の説明が何も無くって」
「は?」
「そ、あの……
「かんこうあんない」
また、何を言っているのかよく
「どういう事なんだそれは」
「ええと、つまりその、ここにはこんな物が
「ただ知れ、と? なんの理由もなく、か? それとも、お前が教え
「いえ、まあ……
「私が何を、
「はい。でもこれって、私も読みきれてなくって、つまり自分のなかでも見解が定まってなくって、だから
「……?」
そんな
少女もそれに必死になって、説明を加えようとする、が。
「もちろんこんなの、私の
「……キュラト様それ、ぜんぜん
「私も
「ご、あ、ごめんなさい……」
なんだろう、話がさっぱり見えない。
言っている少女のほうでもう、何なのかよく
正直これは、参る。
隣の女侍従も参っている。
そして元凶である少女が
もはやこんなものは、疑問祭り。
疑問が疑問の国から疑問符を
もう
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