8.魔城・中 ゠ 待遇と名前の話
「はいです〜。自分で着れますか〜?」
「ん、ああ、大丈夫だ」
ともあれ、
差し出されたからには、今は私も丸裸であり、受け取らない理由は無い。
だから私はそれを身につけた……のだが、これもこれで一体、どうしたことだろうか。
飾りは
それも、合わせの縫い目がことごとく
感触も
しかし絹は
くわえて、服の要所に取りつけられている
その
もしくは
足全体をおおわず
通気性抜群の完全夏仕様であり、しかし
だとはいえ元来、この
それらから足を保護するための物なのであって、反しこのように足が盛大に露出する
要するにこれも、
──フサッ。シュ、シュ。
はて、これが
身に着けつつも、そう首を
「キュラ
「……そうですか」
言われて少女は
その顔は、
これが魔王か。
「改めて、
「悪くは
「立って歩けますか? 今、食事を用意させてますから、話は食堂で」
言われて、空腹を感じた。
それにしても、
これが天使軍に捕らえられた魔族と言うなら、
もしくはその場で処刑と称し、殺害されることも多い。
あるいは、男であるなら男であるなりの、女であるなら女であるなりの、
それが魔王軍に捕らえられた天使と言うなら、もっと
「まだ無理しないでくださいね〜」
「また何か有ったら〜、すぐ来てくださいね〜」
「いつでも待ってますよ〜、
いやその、またとか
それも含めた数々の疑問は解消しないまま、白い女たちに見送られつ、小さな少女に連れられつ、医務室を後にする事になったものである。
さて、はて。
──カツ、カツ。カツ、カツ。
ふたり供立って歩くが、
「あ、あの」
「うん?」
「その、乱暴しちゃってごめんなさい。本当は適当なところで、投降してもらおうって
「とうこう?」
「はい。でも
「それは、どう受け止めたらいいのか、よく
「あ……それは、失礼しました。ごめんなさい、そんなつもりじゃあ
あわてて
本当、妙なくらい素直である。
余談としてはこの少女、
武を
くわえて
つまり
会話である以上はまあ、
その武器のなかでも剣こそが、
まあそれすらも好み、相性、あるいは考え方の問題なのかもしれず、これを気のせいだ迷信だと、
それでも、少なくとも私はそうだったし、この考えに触発されたアンディレアもそうで、私らが剣を主に取るのはこれが理由だった。
そうして会話をして、これより
これを認める事こそが、その相手に対する
そして大まかに、この少女からは今、その剣
素直である事のみならず、自らのくり出す一手々々について、どうですか、どうですかと、確認を
魔王とも呼ばれるような者が、そんなような人物だというのもやや、珍妙な話である気はした。
「まあ、敵同士だからな。そんなことが失礼に当たるかは知らないが、そういえば私は失礼どころか、
「そうですね。
「なぜだ?」
「……」
少女はちょっと黙り、やや
「言う義理も無いと思いませんか?」
まあそれは、そうかもしれない。
ただその
これを私は見逃さなかった。
どうやらそれは相当に、言いたくない理由であるらしい。
しかしそんな事は、教えてくれないなら考えていても
話の続きをすることにした。
「だとしてもすこし、自由すぎないか? 見栄や虚勢を張るわけでもなく、私には理力が無くとも
「はい。ですから私が常に、
「私がお前の、
「ええ。そういうわけで、行動にだけは不自由させちゃいますけど、それ以外はちゃんとお客さんとして
私を魔王に
まあまあ、あの女医務官らの
いやしかし、なあ。
そうして私が首を
「それより
「何だ? 不利になることは
「
名前など既に、
そんな事をちょっと考えながら、こんな事をちょっと言ってやる。
「名前を、
「そんな
「魔王がそれを言うか」
「あ……そこを
私に言われると、少女は
「……そうですか、教えてもらえませんか……ああ……いえ、名前なんてものは
いや、どういう反応だろうかこれは。
これが魔王か。
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