6.侵入・後 ゠ 錯乱と成長の話
彼らの視界に依然ありながら、その追跡は
取り残された彼らは、リギシスを探している
おそらくあの
しかし、その
まあここは敵地であるわけで、他にも敵は山ほど
それでもここまでくればもう、リギシスの問題はリギシス次第、だ。
無責任なように思えるかもしれないが、既に発見されている私が迎えにいってしまうのは、どうにも
追手までをも
それに
大勢を相手取った戦闘も十分に予想されるから、背中を預けれる者がいたら、それは心強くはある。
とはいえ、知りもしない敵地での待ち合わせなど、無事に果たせる保証がどこにも無いのだ。
だから、運が良ければまた会おう、ということで手打ちにしてあった。
そういうわけで私は
私の目的とは、ここの指揮系統を破壊すること。
そのための目標としては、総指揮を確実に、その配下の指揮を
もちろんその顔に、肩書きが
戦場ならば、前線にはけっして出ずに、後方から戦局を見守っている者。
今のような休眠時ならば、居室の位置や周辺の警備密度、室内の調度品などから
そのためにもまずは、探らねばならない。
壁の上から
とりあえずはここへ
だが方針を固めるもしかし、まだ
それにしては……郭内には人の気配が、
「……?」
何だ、これは。
静かなものである。
確かに、
それにしても不審だ。
ここへ来る途中に感じた、妙な予感のこともあったから、
背後の郭上への警戒を
それも徒労に終わった。
何事もなく、その建物へ
「……」
何だ、これは?
はたまた夢か、冗談か。
何事なく
郭の外周では盛大に火が
とはいえ鐘の
なのに、それを聴きつけた何者かが、そこから現れるような事すらも、無いのだ。
不気味である。
敵陣の度真ん中の、そんな正体も
私も命は大事であり、犬死にするつもりなど無い。
ゆえに判断の失敗は許されないが、これは何をどう判断したものか。
さあどうする。
「……っ」
何だ、これは!
こんど警鐘が鳴ったのは、私の頭の中だ。
これは危ない。
直感し、息を飲み、その場に立ちつくす。
さあどうする。
不気味な悪寒に支配され、その
さあどうする、こんな所まで来ておきながら、
「……よう」
唐突に掛かった声に、跳ね上がる。
慌て、そちらへ
「おっ、おおぉぉおい、何だよ何だよ……」
その、
「あっ、と。すまない、君か」
「悪かった。私はすこし、錯乱していたらしい」
ふと彼の様子を
どうやらひと
まあまあ、ある程度なりとも腕に覚えが無ければ、一人でこんな所まで来たりはしないだろう。
納得の事といえば納得の事ではあるが、なんにせよ火の
しかし、当然ながら心配を、彼もまた私へ寄越す。
「錯乱て……あんたみたいのでも、そんなふうになんのか?」
いつの間にか、こちらの呼び方がお前からあんたに変わっているが、まあそれは何でも構わないか。
「
「べつに
「それは、だな」
あたりを
リギシスもまた周囲を
「あー……ああ。まあ、そりゃあ確かに
「そうだな。何にどれほど反応するかは、人とその状態に
「ふうん? 案外あんたも、精神はそんな強かないんだな」
「苦し紛れに、
「はん。どうせそんなん、冗談なんてもんじゃ
なんとなく、私とふつうに会話をしながらも、すぐ
ほんの
あるいは彼も、いま初めてこのような、切迫した舞台に立ったのかもしれない。
それによって一定の成長が
特段そんな彼を、放り出していくような理由も無い。
「
「いやそれなら、私も行こう。敵地の
「平気か?」
「
「
「それもそうか。ありがとう」
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