6.侵入・中 ゠ 開錠と逃走の話
「くっ」
慣れないがしかし、このまま
そんな事をしては、今こうして奪った命にも、申し訳が立たない。
例によって簡素な
なお、
いかな不可思議の物質といえど、それが固形をとる代物であるかぎり、生身の物を
だから普通なら持参の
それが理力の発現物であれば、消失させるだけで御破算に
まあ発現のたびに一応の
もっとも、こんなものが果たして天使と呼べるのかどうかは、私は知らない。
──ふうっ。
答えの見えない哲学的な疑問はそれとして、私はひと息ついて呼吸を整えると、次の行動に移る。
何をどうするかは
ちなみに、こうして壁を登ってしまうくらいなら、折角あのように手薄の一角も
そんな疑問をリギシスは持った。
仮に
しかしまず、その手薄の一角もべつに、無警備というわけでは
だからこそ彼には、
それを合流などしてしまっては、全てが
また、ほかの場所を選べば結局、彼までもが
登ること単体だけでもう、大半の者に
あまつさえ、警鐘を鳴らしてしまった後ともなれば、さらに別の応援でも得れないかぎり、至難を極めることになる。
それに、
郭壁の反対側には階段が用意されており、そこを降りてみれば案の定、そのとおりの状態である。
まあ錠というか、立派な
一人で動かすには
──ズッ、ズリッ……ガコン。
いや、重い。
どうにか
どうにか開くようにはなったが、今はまだ閉じたままに
リギシスが中へ入るより前に、
ついでに
さてそのリギシスを、どう内部へ導くか。
とりあえず彼は
そのどれかだろう。
最後の場合だともう、こちらに
無情ではあるが、その状況で彼を救出しようとすると、こちらが当初の目的を果たすのが困難になってしまう。
その事についても
よって残りふたつの場合を考えるべきだが、まあこれらを区別する必要は無いだろう。
最後の場合になると手が打てなくなるわけで、それを防ぐには彼を追ってさがす
つまり、する事に違いは無いわけだ。
なので、まだ彼が捕らえられていない事を祈っておくとして、どう敵の気を
私はそれほど器用では
ならば、いちばん簡単なのは私が敵に、
こちらはもう、いつでも郭内へ入り込めるのだから、この郭上かその郭内で適当に騒ぎを起こせば、リギシスの負担はだいぶ軽くなるはず。
そして当然彼は、
だからその
そう決めてあった私は、ふたたび郭上へあがると、そちらのほうへ向かう。
これから見つけてもらいにいくと言うのに、
堂々と走っていった。
──タタッ、タッタッタッタッタッタッ。
周囲は、少しずつだが明るさを増しており、それにつれ視界も、徐々に利くようになってはいる。
そしてこの郭内には、
だから反対側の郭壁も、いちおう
あるいは私も、
目標の
結果として私は、先制を得た。
「っ
こちら方面へ向かった
それを、リギシスが
大多数は不審者さがしに、郭壁を
もちろん、私も足音をたてて駆け寄っていたのだから、気づかれないはずも無い。
が、発現された得物の色に、目を奪われてしまったか。
私はその者の
──ザシュッ!
「あぐっ……がああぁぁあ……っ!」
当たり前だが、自分で
痛いに……違いない。
……。
「
「こいつ
──カーン、カカーン! カンカーン、カカーン!
あとは、これだけの人数を一度に相手するような、危険を
適当に郭内まで、逃げ延びればいい。
それは果たしてこの状況において、私にとってかなり、
「待て貴様!」
そんな声に、応えるような
今いた
「あ」
「おい」
「正気か」
身を躍らせたと
まあ彼らには、理力というものの持ち合わせが無いから、
とはいえ、先制奪って優勢に立ったはずの者が、行きなり自害し始めたりするわけも無かろう。
そこまでくらいには
──ヒュウ。
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