6.侵入 ゠ 敵に情は無用か
6.侵入・前 ゠ 登攀と奇襲の話
──カーン……。
わずか
リギシスは郭壁の
そう宣言してみせたのだった。
どうやらそのとおりに
なにやらなんでも、理力でもって簡単な道具を
そうは言っていたのであるが、それにしたって
──カーン……。
そうして畳み掛けに、もう一回。
「……お、おい……?」
「……ああ、行くぞ……!」
高きに
鳴った音が、
もちろん鐘の鳴らし方には、意味の識別のために、合図の規定が有ろう。
それに対し、いま鳴ったのは
それでもやはり、何が有ったかの確認は、どうしても必要になるかもしれない。
とはいえ、どうも
さすがにこれには、こうまで簡単になってしまっていいものか、すこし思い悩まされる。
折角あそこまで高かった
郭壁の高さに油断でも
どうしても疑ってしまうところは
警鐘に鳴られた経験もまた無くて、彼らにも対応の不慣れが有るのかもしれない。
とは言っても
郭上に依然、二名ほどその影が
もしこれが一名だけだったら、どうという事も
だからこそか、利口なことに奴らにも、単数になるつもりは無いらしい。
いや、二人でも。
不意を
両名ともまだ、鐘の鳴ったほうへ注意を
それが再び下方へ、向かないことを祈りながら、その視線の逆方向へすこし距離を取ったあたりで、郭壁に接近。
取りつき、
郭壁とは、遠目にはなめらかな平面に見えるもの。
しかし実際には、
さすがに手に取りやすい突起は、施工中に
とはいえ、万全を期そうとすれば工期が際限なく延びてしまうから、なんとか利用できそうな手掛かりが、いくらか残っていたりするものだ。
かつ、倒壊しては
──ジリ、ジリ。
どうにかそれを伝い、
そして、なんとか登れるとは言っても、そこに
──ズリッ。
「っう」
現に私は、片足を滑らせた。
冷やりとする、以外に言えることが無い。
──ヒュウ、ヨウ……。
そんな私をなお冷やかすかのように、一陣の風が吹き抜けていったりもした。
その緊張は、
「……」
──ふう。
すこし深呼吸をし、心を
この郭壁、
例を見ない、と言っていい。
言うまでもなく、発見されるその可能性も上がるにつれて増すが、上へと登っていくなら当然それだけ、高所恐怖というものがどうしても
それは、敵の存在からうける緊迫感とも
それにどうにか、耐え。
ひとつ、またひとつ、手と足を進めてゆき。
普通ならば、これには手が続かなくてとても登り
しかし私は、天使だった。
理力により、
何度となく
振らふらと前後に
一つ、ひとつ。
どうにか上がりきった。
まだ気は抜けない。
下から
そしてここからは、より慎重に。
そして風が、おもわぬ吹き方をしてくれないよう。
「……」
その彼らはまだ、気づいていない……まだ、まだだ。
そんなふうに私は祈りつつ、神経すり
つまりは真下の門を、開くように
だから彼らには、ここから居なくなってもらわなければならないし、加えて言うなら、
そう。
──シト。シト……。
それには、そのためにはこうして
私の剣の射程圏内に、彼らを取り込み。
どのように運ぶが良いか、剣の軌跡を頭の中でよく
その
──ドスッ! ビシュッ!
……そして、一人はこちらへ気づく前に、もう一人はこちらへ気づいた直後に
相手たちは声をあげる間も無いまま、鮮血をふき散らす。
「……ぶはっ、はあっ、っはあ」
気配を
私の詰めていた神経も一気に、解放され。
何とも
何とも
確かに浴びたはずなのに、まるで温度の感じれない返り血の、
そういった、
次に目にした光景は……こういうもの。
「っ! ……っ」
──ヒュウ、ヒュウ。
二人目のほうは
そのまま絶命してしまった。
ここに今あるのは、かつて二人だったもので。
ただしもう、何でも
……そんな光景。
何を、言い
おそらくは、自らの意志というわけで
あるいはその際、
そうしてこのような、異邦の地の夜半。
不寝番という、至極面倒な役目に
不意に敵は現れ、
我が命まさに
いったい何を、言い
いずれにせよ、これでまた、ひとつ、ふたつ、唐突に命は、
それは私より、ずっと、若い命だった。
……そうだ、突然の問答無用に命を奪うのは、きっと
そんな言い訳を、心の中ですることでしか、この手応えの
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