5.郭壁・後 ゠ 観察と協力の話
なんにせよ、その
そんなことを私が
「……リギシス、だ」
見た
それではどこの
「所属は?」
「……西部師団第
「西の
「お、お前こそ何してんだ」
……いや、なあ。
居ないはずの場所にいる
それは果たして、説明しないと
青いな、と
素直に教えた。
「この
「……だったら、どうだってんだ」
「段取りはどうなっている?」
「そんなこと……どうしてお前なんかに、言う必要が有る」
「君の
正味な話をするなら実は、
しかしまあそれは、言わぬが花、と
「……見てのとおりだ。壁の向こうは、
「ああ、そうだな」
「……」
黙り込んでしまった。
つまり段取りなど、おそらく
だからこそ、目標を前にしてただ独り、震えてだけいたのだろうから。
きっと彼は、私のように
いまこの場に、手薄い警備のちかくに
ただ、そこまでで
いや、それ自体はべつに悪いことでは
自身も量らず方策も
──ジリッ……。
私がそんなことを考えていれば、リギシスは
質問をすこし、別のものに変えた。
「どうして独りで陣を離れて、こんな場までくる
「……」
「何も始まらないぞ、言ってみろ。内分の話なのだったら言いふらさないし、もし
「……
リギシスはまた小さく
「エテルマが、
「エテルマ? 君と、同じ部隊の者か?」
「ああそうだ」
「君の、女か?」
「……」
彼は返事をしなかったが、まあそうなのだろう。
そしてもし、それが身内や上官なのだとしたら、
つまりは、それらに該当しない種類の大切な人物、そういう相手なのであるに違いない。
もっと言うなら、素直に伝えないとするとそれは、何らかの約束を特にしていない相手、という事すら無き
さて、どうなのだろうな。
「
「探しても、元気な姿どころか遺体すら、見つからない?」
「……
──タンッ。
それでリギシス、今度はやや配慮するかのように、そっと
よく聞く話である。
魔王軍に敗れた部隊の、その構成員。
これが
戦場に遺体として
どうなっているかは定かでないが、しかしおそらく、ろくな事にはなっていないのでなかろうか。
リギシスの
探せど探せども、大事なひとの
悲痛で気の毒なことではあるが、それでも遺体が見つかっていないのなら、この
なお一方で、敗戦となってしまったその跡地にて、無念にも発見される天使らの、その遺体。
これが
その目も閉じられ、その両手も胸に
どうしてそのような状態で
かといって、
それはそれで薄気味悪くも、
「それで?
「……」
「エテルマを取り
「両方……だっ」
「そうか。なら協力しよう」
「……何?」
「実は私は、裏手の
リギシスは、こちらが何を言っているのか
それほど難解な
「協力する……だと?」
「そう言わなかったか?」
「お前が、
「ここに君と私以外の、
「……どうしてだ?」
「仲間だろう?」
「……」
それが本心だったが、それだけでなく助力をも仰げるのであれば、そのほうがはるかに良いに決まっている。
そんな気持ちから、出た言葉ではあるが。
これを受けたリギシス、その顔は
それは
私も
やがて彼の中で、何らかの折り合いがついたらしい。
私が心ゆくまで彼の隠し
「……ここが
「警備が薄いなら、薄いなりの
「そんなもんか。あんな、
「いちばん
「危ねえのにそっから、入るってのか?」
「そうなるな」
「けどそれには、奴らが
「そうだな」
「
「そうしてくれたら有りがたいな」
「
「そうかもしれないな」
会話がここまで進んだところで、リギシスは
「それをどうにか
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