7.強襲 ゠ 相手を下す最善手は何か
7.強襲・前 ゠ 大人と怪訝の話
「っ
「ああ」
そうと決まればこの、大きな建物を調べるしか無い。
それは全体として、木造ではある。
しかし普通、これだけの規模のものならば、柱くらいには石を使いそうなもの。
それ以前として、兵舎というものを分割せずに、ひと
部隊ごとに建物を分けることで、管理をしやすくなったり、
ほか、幹部向けの建物を別個に
威厳、そんなものは
そう言いきる者も少なくないもの。
しかし実際、軍隊のように
なんにしても、不気味なことには違いない。
とはいえ、まずは入口を見つけなくては、どうにもならない。
その部分で私とリギシスは一致をし、とりあえず速足でもって、ぐるりと建物の周囲を見物してみる事にはなった。
──タッ、タッ、タッ、タッ。
その周り
「……いや。
「うん?」
「あんた別に、そんな
「それは言いっ
「へえ、そんなもんか」
「全部が全部では
「一応、
「すまないが、ある意味そうかもしれないな」
「おう、やっぱ
「いや、そういうわけでは
「なんだそりゃ」
「ほらな。こうやって、肝心なところにどうでもいい言葉を持ってきて、お茶を濁すのが
「……納得したけど納得できねえ……」
何にでも突っ掛からんばかりの
彼も今こうして、軍規の
大切と思う人を見失い、その
彼はいったい、何を思っただろうか、何を感じただろうか。
それは、
私もまだ、忘れていない。
初めて踏み出さまいかと
どうにかなりそうな程の、あの鼓脈
あるいは、
すこし私は気分を良くしたのかもしれず、まあ要らないことを語り始めたような気はする。
「ただな。君は今、いくつだ?」
「今年で十七だぜ」
「私は
「は?」
「つまりだ。君は
「そりゃあ……あれだろ。
「ほう。本当にそう思うか?」
「……いや。そうじゃねえ
「ふむ、やっぱりそうか。まあ私もそう思うんだが、しかし
「あん?」
「こうして囲いのそとに、
「そいつあ遠慮しとくわ。っ
「さてなあ。ただ、人っていうのは
「
「ああ。しかしだったら、結果的にこういう事になるのではないかと、私は考えたんだ」
「こういう事?」
「
「……ふうん」
それも実は、なんとなく直観的にうかんだ言葉であって、その意味も正否も自分でよく
まあまあ
との話と、同じ結論にしかならないのではないか。
ならば特に、意味は無い。
そう思うも、しかしリギシスのほうはこれに、なにやら深い理由や意義が、
その解釈に思考を
結局、私のそんな投げ
どうせ人など、影響したりしなかったり、影響されたりされなかったり。
そんな事を目的として、生きるようなものでも
なんでもよかった。
──ザリッ、ザリッ。
まあそんな、毒にも薬にもならない会話を持ったものの、複雑とはとても
その入口も、それほど労せず見つかった。
位置としては、侵入してきた
その中央あたりにのみ、大きな
それにしても、と私とリギシスは小声で会話をしつつ、ふたり首を
「これだけの大きさで入口が一つだけ、というのは釈然としないな」
「ああ。こいつあ不便じゃねえのか?」
「少なくとも、ちっとも兵舎らしくは
「開けてみるか?」
「ほかに入り込めそうな所は無かったな。あるいは、壁でも破ってみるか?」
「そいつはそいつで、敵さんに集まってくれっ
「こちらにも、
「掛かってなくたって、よかねえ場合は有るだろ」
「まったくだ。この世は面倒に出来ている」
念のため、もういちど周囲を確認したあと。
ふたりして目で合図すると、
──ガチン。
荷を抱えた二、三人が、並んで通れるほどの大きな
──ギッ、ツィー……。
「……?」
郭内
にもかかわらず戸止めだけに任せて、夜間でも
それだけでも十分、相当に
内部は
どう目を凝らしても、なんの姿も認められない。
こんな大きな
なのに、それを聴きつけた何者かが、こちらへ急行するような気配すらも、無かった。
そう
「何だあ、こりゃ……」
「まあ、入って確かめるしか無いだろう。しかし、これは」
──ザッ。ギシッ。
不安も途惑いも、隠せない。
あれだけ立派な郭壁を築き、少なくない数の
「張り
「
「そうだな」
「エテルマは、どこだ……?」
「ふむ。あるいはまさか、本当に縮地の魔術が? いや、しかし」
「そんなもん認めたくねえ……」
「無理も有るしなあ」
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