3.休息・後 ゠ 要害と攻略の話
そのまま器の水を干すと、アンディレアは私にも
「あなたも要る?」
「いや、いい」
「そう」
そう受けた彼女、空になった器を台に置くが。
丁度そこには、私の読みかけの書が置かれていた。
これを見て、
「……あなた
「まあな。本というのは、人の考えるところを
「それは普通じゃ
……。
「そう、だろうか」
「そうよ。
「ふむ。まあそれは、そうなのかもしれないが」
「あなたも言うことが
「そうか。それはすまないな」
「それで戦果も挙がってるんでしょうし、別にいーけどさ。まったく、変わり者なんだから」
変人認定されてしまった。
たしかに、
あわせ、字自体がそもそも苦手、という者すら少なくないものだ。
字なんか覚える暇があるのなら、道具の
そんな風潮が根深く、識字率もあまり高いものでは
天使らの間ならば、人族からの
しかし、それだって総員というわけでは
そんな情勢下では、まず考える、という習慣すら
だから、こういう問題にはもっと良い解決方法が
こんな開らけた場所に、伏兵など設置されるはずが無い。
そんな強烈な固定観念に
何が
のみならず、逆にこれを密告することで、こちら側での優位をもまた保たんとする
そんな
なんだそれは、頭が良いな。
むしろ私のほうが、そんな想定など
そんなような感想を、アンディレアから話に聞いた瞬間、私は持ったものである。
ただまあ、こういった感じのことが当たり前の状況でなお、私に
魔族と通じようとの言葉が冗談に聴こえない、と
救い、とでも
「……で? いつ
「そうだな。とりあえず今日明日は休養するとして、なにかと準備もある。四日後か五日後くらいになるだろう」
「そっか。どこへ?」
「ラノルディ地方へ向かおうと
「……なるほど、ね」
それは割と、最悪と言ってもいい存在だった。
その実現には、目的とする機能にしたがってそれなりの選地と設計をすること、それに
といった事が要求され、特に最後のものは至難だった。
それを押してまで
物理的に守備力が高まるのは、まず
体勢が崩れても立て直しやすく、いつでも好きなときに遊撃へくり出し、好きなときに休養を
そういった機能は敵の進軍計画に対し、大きな
なにより、とりあえず
士気が低下すれば、勝てる相手にも勝てなくなるし、逆もまた
支払うことが
そのような相手には、よほどの兵力差が無ければ攻略は難しい。
正面から直接
その労力を最小限に
非常にやっかいな相手だ。
これを短期に下したいとなれば、敵に気づかれにくい単独、ないしは小班での潜入活動が望ましい。
その構成員には言うまでもなく、精鋭が不可欠だ。
それには私が適任、と言えるかどうかは
べつにこれは成功続きの私が、慢心により
そうとはなく、これには能力的な要素ももちろん有るが、それ以前に権限的な要素が絡んでくる話。
そこに
能力をもつ者ほどその
その
そしてなにより、私は
応じてくれるどころか、まず誘わせてくれるかすらが、もう疑問だった。
だから、
そういう判断である。
「それならやっぱり私は、足手まといだね」
アンディレアも、けっして無能では
ただそれは飽くまでも、一兵卒としての話だった。
腕前としては、そちこちの男らを
が、しかしそれに過ぎない。
単独、あるいは少数で行動するには、ただ戦えるというその一点だけでは
そうもなければ願望を
戦闘力が高くとも、潜入活動には
この事でよく勘違いされる点としては、これは別にアンディレアの頭の切れ味うんぬん、ということでは
つまり、何らかの戦闘行為が有ったとき、そこに
どんなに強い力を
基本、
だいいち多数存在する
にもかかわらず、そういった場で敗北を喫したことのない彼女の頭は、むしろよく切れるほうの部類のはず。
そう言えるのだ。
要はこの話は、向き不向きの話なのである。
学術を得意とする者が、
素晴らしい楽曲を
それらと同じ話であり、アンディレアは
だから
そして、潜入活動においては。
極力騒ぎを起こすべきでない場においては、
それでは不適なのだ。
「……」
まあ実は、彼女へ声を掛けれない理由は、ほかにも
それも含んで黙ってしまった私に、アンディレアはこう言ってくる。
「あー、ごめんなさい。反応に困ること、言っちゃったね?」
「いや、すまない。私は悪い意味で、正直者らしい」
「知ってる。そして私は、それを
「……」
どうも彼女には、絶句させられる事が多いような気がする。
「アンディレア、君という存在は私にとって、そのな」
「いーから。頭こっちに寄越して。おねーさんが無事のお
「……」
どうも彼女には、絶句させられる事が多いような気がする。
「アンディレア、君にお
「んー。じゃあ何なの? 私」
「アンディレアは、アンディレアだ」
「なるほど。頭こっちに寄越して。アンディレアが無事のお
「……」
どうも彼女には、絶句させられる事が多いような気がする……が、ここはまあ、有りがたく
まったく、天使のような奴なのだ。
まあ天使なのだが。
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