3.休息・中 ゠ 平等と公平の話
みんなで笑える世界。
まあ
そんな彼女がいま口にした、これがまた私の
苦し紛れに、言い訳
「
「え、不可能。難しい、とかじゃ
「つまりな。笑えるというのは
「でしょうね」
「人は現状に対して、納得を得れたときに
「うーんつまり、
「ああ。それでその納得を、現実が自身の価値観と一致することで得れるんだったら、その価値観を自由に発揮できることが幸福の必要条件、というわけだ」
「なら、えっと……みんなで笑える世界を目指すなら、まずその自由を約束する?」
「そうなる。そして万人に対して自由を保証するには、
「
「ああ。具体的にその、
「越えちゃいけない、線」
「
「あー。そういう人もいるかもだけど、普通はその
「そうだな。しかしその
「って言っても、好きなように、を基準にしちゃったら境界線引くなんて、無理ねえ。
「ああ。そういう願望は当然、他の大多数の自由と衝突する。つまり、好きと
「あちらを立てればこちらが立たず、か」
「そうだな。かと言って、それを平らに
「あーうん、そうねえ。平等じゃなくて公平じゃないと
「いや実は、その公平というやつも、たいがい
「え、そうなの?」
「たとえば、
「そうそう。目の高さが
「そのやり方だとまず、未来の芽を摘んでしまうことに成りかねない」
「未来の芽?」
「ああ。高台がそもそも用意できるんだったら、
「あー。それは
「だいいちそれは、秀でた者からしてみれば、劣った者にくらべて少なくしか、応援を受け取れない。それも、秀でたなら秀でただけ減じられて、序列が一定の
「それは……笑えないわねえ。
「そうとも。なのに
「でも
「まあ違うな」
「あ、やっぱ違うんだ」
「要するにこれは、同一条件
「そうよね。ちゃんと能力持ってて、それでちゃんと結果出せた人ほど、報われなきゃ
「そのはずだ。ところがそれに、額面どおりに沿ったとしたら、これが
「そんなに?」
「相当
「あ、うーん、そうなるのか……」
「そうだろう。力ある者が奪えて
「いや順当ったって、そんなの
「そうなんだ。それで、公平はそんな物では
「うわぁ、
「まあ、そんなものだ。認識的には
「はー。大勢で言ってることって、やっぱりみんな良い悪い抜きにして、乗せられちゃうのねえ」
「
「あ、あーそっか。言われてみればそうだわね」
「ところが、そういった問題を軽減させようとしたら、さっき言った平等やら、負公平やらを
「滅茶苦茶な事になりそうね……。どれにも
「そうさな、だったら
「あれ。それってもしかして、話がふり出しに
「もっと悪い。混ぜるという事は、それらの欠点を同時に抱え込む、という事だからな。平等はそもそも全員の敵で、公平は弱者の敵、負公平は強者の敵なわけだろう」
「あー……
「そしてそれは、そのまま
「うわぁ……」
「要するに一律の基準は、
「えぇ……。そんなの、どうすりゃいいのよ」
「さて、な。手のとどく範囲のことを、自分なりの
「だからつまり、実現不可能、か……」
「ああ。
「そうなんだ、ね……」
残念ではあるが、これを認めないことには、いつまで
世には、ある一定の考えかたを善しと
しかしこの結論に基づくかぎり、その教えは原点からしてすでに
実際、
複数間での、対立を絶てていない時点でもう
宗教とは
だからそれが、世の全てを許容するような
どんな事であれ、これを
何も考えない
衝突は根絶できないのだ。
きっと世の施政者たる者たちは、そんな事には
その上でなお、各所よりあれこれ不満を
もしも自分が同じ立場に立ったらと、そう想像したらばもうそれだけで、
対し、つまり私は
それまでは考えなしに、みんなで笑える世界を目指そう、などと
周囲には
いま特に、彼女に落胆したような様子はみられなかったが、その内心まではどうだろうか。
それは考えても
「私が
「うん……それは、どうにかしなきゃだね。私にそれを、手伝うだけの力があれば、よかったんだけど」
「君は、特別遊撃隊の所属では
「まえ、遊撃隊じゃ
「それは、そうだが。しかしそれでは、君も私と同じように」
「あなたが
「……」
その即答に、私はやや、絶句させられてしまった。
「あなたに同性愛を感じてないっていうのは、すこし
「私にそんな趣味は無いよ」
「私もよ。それでも……私は、あなたを愛しています。だから、危ないことは
そんな言葉を、悩ましげに送ってくるアンディレアの
──ふっ。
私はそれにどうしてか、ある
「ありがとう」
どうにか礼の
一応の
「本当に有りがたいって思ってる?」
「ああ、すまない」
「……もう」
そう漏らしたアンディレアは、寝台から立ち上がり。
その器に指を突っ込み、私の顔へむけて
「うりゃ」
──ピチ。
「ああ、分かったわかった。すまなかった」
「ふんだ」
まあそれで満足したらしい。
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