2.憂鬱・後 ゠ 戦乱と不徳の話
──パーンパラッパーパッパッパー……、パーンパラッパーパッパッパー……。
それで
だから、場の総員へ指示をしよう
ふたりの沈黙より、かなり
そう。
私たちは
とはいえ天使側も、
その天使側へ、
その軍勢は、魔族のそれである。
彼らはある日突然、宣戦布告すら無しに、人界への侵攻を開始したのだ。
人族の守護者を自負する天使としては、これを
神魔戦争。
これは、そんな名の戦乱だ。
まあ事後ならともかく、事中に名称などまるで有意では
魔族らを
いちおう、……はて?
何だったか。
「キュ……キュー、ラ……」
「ん?」
「キュラー、トス、ネイツット……うん?」
荷をまとめる作業をしつつ、
しかしそれを聴いただけで、私を手伝ってくれていたアンディレアは察し、正解を口にした。
「キュラトーゼレネンティエーツェ?」
「ああ、それだ。そうだった」
「
「さてな。妙に長いし、意味も読み解けないし、混成語か何かだろうか」
「かもね。前はもうちょっと、短く
「ふむ」
ちなみに私のスィーエは
しかしそれが、長っ
皆、魔王としか呼ばない。
そのせいか、私も
キュラトーゼレネンティエーツェ、キュラトーゼレネンティエーツェ。
うむ、
魔族、そして魔王。
彼らは歴史上、
天使は人族と
だから魔族らの
ただ、現在の魔王がいつ
その理由はいろいろと
なかにはそんな説もあり、これには一定の状況証拠的なところも認められ、だから私もこれを支持している。
神族、そして魔族。
どうしても
一部の個体らが、
両者とも、なんにせよ争いごとは無益。
そんな、特に話し合いは持たなかったにしても共通の認識が、
多少の
「平和主義の魔王、か。どんな奴なんだろうね。やっぱ、
「どうなんだろうな。
「そんなのあなたにお任せするわよ。前がどうだったにしてもねえ、戦争押っ
「おやおや可哀そうに、顔合わせの前にもう振られてしまったか」
ふと、魔王も恋愛を、
アンディレアと交わした軽口のなか、そんなふうに
それについては魔王本人が言及をしない以上、憶測くらいのことしか言えない。
だからその言動はおろか、人物像すら聞こえたりしてこないのも、
だがいずれの理由にしろ、天使側にもだまって魔族の好き勝手を、許してやる義理は無い。
そうして
その戦局は、先手をとった魔王軍にやや押されている状況であるものの、どうあれ人族にはいい迷惑である。
神属は魔界へ入れない。
魔属は天界へ入れない。
そんな事ももう常識ではあるが、であるならその戦場には人界を
いや、荒らされたのは土地だけでは
魔族が人族に対し、暴虐を働いているであろう
しかし神族側も人族に対して、物資補給などの援助のほか、運搬や軍設建造などの労役。
あるいは慰労のための
果てには性的な歓待。
そんな事までをも
具足や兵糧を
私の視線を追ったアンディレアも、多色まじった嘆息を漏らす。
「うーん。あれはあれで感謝、なんだけどね」
「ああ。人族たちには、相当に無理が行っているはずだ」
「せっかく
「そうさなあ。どれくらいの者が、ちゃんと感謝をしているんだろうな」
「さあねえ」
残念なことに、守護してやっているのだから当然。
存分に尽くされて当たり前。
そう考える天使は、間違っても少なくなかった。
守護者とも
そう叫びたいところではあるが、しかし結局は皆も、我が身が可愛いのだった。
不当に因業に、
そういった者たちが
そうやって力の増した豪族と敵対するよりは、多少の酸苦は飲み下してでも、手を取り合ったほうが得策。
普通はどうしてもそう考えてしまうものだし、それは弱さで甘えだと
だから、そんな
そして、こういった場合には
同時に
しかしそう主張する者から、では当該問題の改善のために、どう行動すべきか。
そういう案が具体的に得られ、ないし実施された
かつ、現状を変えるつもりが無いなら文句を口にするな。
そう皆へ注文をつけようなら、まずはその有りがたい注文の発注者から、自言実行が
そう
いずれか不服あらば、
それどころか苦情の封殺とは、問題認識の封殺をも意味するもの。
隠された不満になど対処のしようが無いのだから、より良い方向を目指さんとするならば、
文句とはたしかに
それに逆行するかたちで
なんにせよ、長い物には巻かれろ。
この
そして、どこかの
その彼らが白と言えば、それが黒い物であっても白い
これに、初めのうちには違和感や反感を感じていたとしても、それに慣れればやがて、当たり前のことへと成り果てる。
いったん出来上がってしまった、この構造を是正する、などといった
果たして神族もまた人族に対し、暴虐な
何が問題かは、
だが、それをどうすれば良いのかは、まったく
「さあ。帰ろっか」
「ああ。そうだな」
……天使の
それが
そんな我々にいま
ただそれだけだった。
そして、そんな
このさき待ち受けるのが、勝つか負けるかの
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