1.無念・中 ゠ 哀悼と追跡の話
それでも私は
考える力が、もっと
問題に対する答えはすぐに弾き出され、これほど考えずに済むのではなかろうかと、そのように想像していたものだ。
何らかの事に継続して
そうして学習することによって、積みあげていくものが、いわゆる教訓なのだと。
そこから物の性質や法則、ないしは真理までをも
こういったものを手掛かり足掛かりとして、人は成長していくものであろう、と。
そして無論、この私もそれに
そう考えていたのだがしかし、それにしては物事を知れば知るほど、考えても
そんな気がした。
あるいはそれこそが、私が
なのであれば、
残念ながら、定然な事なのかもしれない。
──スッ……。
いま眼前に
その
それが、
私が以前からずっと、そのように
それを今では
それに触発された。
あるいはずっと抱えつづけてきた、自身のその申し訳なさを紛らわせるために、何かに
「
くり返しになるが、なんにしても
殺伐としてしまうところは
この男が単独であった、という所から考えられるのは、大きく分けて二つ。
うちの
そうであったらば確保は難しくないだろうが、もう
これを逃してはならない。
私は
さすがに、沢中には足跡など
これで
ただここは基本、緩やかではあっても下りの
人足にくらべ、馬の四つ足はそれらを乗り越えるのが得意だし、なによりその速歩は人にしてみたら、
普通のことを
──バシャンバシャンバシャン!
危険を承知のうえ、私は全力で走った。
盛大に水
もっとも全力とはいえ、こんな場では全速力を出せるわけも無い。
馬の速歩より若干速い程度がやっとだったから、
それでも望みを挙げるとするならば、この沢には所どころ、馬でも容易に進めない
かといって沢を
その事を、私はすでに知っていた。
全くの不可能、というものでは
そこに
まだそれほど、気温は
そして沢水とは清水の集合であり、清水とは冷たいもの。
全力で駆け、
なにより、そうやって
──バシャンバシャン、バシャン!
苦しい。
もうはや、息が上がってきているが、私はこれからどれくらいの時間を、駆けつづけねばならないだろうか。
単純計算、仮に相手の二倍の速度で迫ったとして、それで相手に先んじられたのと同じだけの時間が
馬を奪われてから、どれくらい経過したかなど定かでは
実際にどれほどの時間を要するかは、まったく見通せない。
くわえて私がこのように、沢水を
近づけば近づくほど、追いつくは困難となるだろう。
──バシャン、バシャン、バシャン。
駆走時間は
また、走っている間とは、それも全力でそうしている
そんな
逃してなるものか。
その一心で走りつづけて、やっとだ。
「……?」
やがて見えたのは、馬の姿。
そう、馬しか見当たらない。
つまり、ここまで馬を
力ふり絞り、どうにか馬まで駆け寄ったが、
そこにただ、
はて、これは。
せっかくの、奪った馬まで放っ垂らかしにして、どこへ消えたか。
──ガツッ!
払われた矢が、そんな音を
私の背へむけて
矢の飛んできたほうへ向き直れば、下手人は難なく発見される。
その人物、死角より
そんな表情を見せつつも、手に持つその弓うち捨て、身を
──ガイン!
私が受けたことによって
金銀や銅ほどでは
製造の手数もそれなりに掛かるゆえ、どうやって数を
これは、
名匠の産みだす
全くもって
攻撃のくり出されるその速度は、高まるに相応の時間を要し、そのための予備動作も
つまり、よほどの
あるいは予兆の察知を困難にさせる、
そんなような強敵でも相手取らないかぎり、
無論、
それでもこれまで肉体の鍛錬、技術の
つまり負けないと
だから私は、油断をしない。
油断をしないとは具体的には、状況の判断を誤らないこと。
突き詰めて言うなら、状況を取りこぼさず
たとえば異常事態に
そんな場合に人や獣が、本能的に耳を
その本能に
思い込んではいけない。
頭の中だけで判断をしてはいけない。
命のやり取りにおける失敗が何を意味するかは、説明の必要に及ぶまい。
では、
さてどうだ。
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