哲学魔王と迷える天使
1.無念 ゠ 人はなぜ生きて死ぬのか
1.無念・前 ゠ 遭遇と斥候の話
それでも私は
考えすぎとは、私のよく言われる所だった。
──ガツッ!
払われた矢が、そんな音を
丸腰であった私へむけて
……うむ。
やはりこれは、文章にしてしまうと
丸腰の者が剣とは
まあ間違いないのは、弓に
そちらへ向き直ると、当該人物は難なく発見された。
実戦に慣れが無かったのかもしれない、あるいは自身の腕前に過信が
相手の背後より、
そんな表情が、
無論、そんな事で遠慮をしてやる義理は無い。
位置もそんなに離れていない。
──ザン!
「うぐぁあっ……!」
悲鳴が
私が
この者が矢を用いるは、もう無理だろう。
そして今、この者がこの状態であるのに、ほかで何かが働くような気配は感じられない。
こちら同様に単独、という事だ。
このままこの場を離れたとて、
「ひっ」
その目にやどる悔しみが、
私が剣を、振りかぶったからだ。
それに、この目のまえで苦しみ
将来も有るはずだった。
なによりこうして命を奪ったときの、この感触は、どうにも
「……」
沈黙。
残念ながら、この状況でこれを生かしておく手は考えられない。
男の命を
これはどうやっても、
かといって、こんな
結果としてこの男は、不必要に苦しみを加えられたうえ、最終的にはやはり命尽きる事になる。
それでは
「御免」
申し訳なさは当然、
そしてそれは、謝罪の言葉なんかでは晴れやしないが、それでも
諸説は
頭脳でもいいが、
ほかに弱点としては
これを
これについて、そんな配慮は自己満足に過ぎない、つまり価値も必要も無い。
そういう指摘を受けることも有り、そしてそれは否定が
これは、必ずしもそこに固執するわけでは
逆に、
そんな反論すら、結局はその命を奪っている以上、自己満足に過ぎないのだろうから。
どうあれ、致命傷を与えればその血液は盛大に吹き出すもので、現に私もこのように
それも背負うべき
こんな事を
こんな事を
……世は無念、
そんな事を
「ああ。
百は超えるか、超えないか。
少ないとは勘定しがたい
尾根筋あたりを草木かきわけ、進んでゆくそれは遠目にも、
伏兵である。
尾根の
そして、この陣の所在とは微妙に異なる方向へ、その集団は移動しているのだ。
百の兵とは、けっして
自分一人へと
どれだけ多数の軍勢であっても、矛先を分散させてしまえば数の優越を薄れさせてしまうがゆえ、基本的には前一方に集中してよく迫撃するよう、隊形は組まれるもの。
しかしながら人の単体と違って、人の団体がその方向を転換するのは容易でなく、これを後ろから
軽視すれば間違いなく、
とはいえ比較の観点で
広原という、奇襲にあまり適さない地形である以上、通常考えられる
そこをあえて、
つまりこれは、奇襲に向かない場での奇襲、との裏を
かつ、この条件下で効果を挙げさせるとなれば、他方面からも同様の、それも複数の襲来が、おそらく有る。
これによりて多角包囲を
そう考えるのが自然だったが、いや毎度々々。
我々の指揮も、これといって無能ということは無い。
この情報を持って帰れば、対策を講じ、適切に兵を動かしてくれるはずだ。
「
私はそこから、かの尾根をつたう伏兵をも
さいわい私は、この地を以前にも訪れたことが有る。
草原まで出たほうが、移動速度は当然高いが、そんな事をしては当たり前に、敵から発見されるだろう。
こちらが伏兵に気づいた事を、
もっともそこは、
その沢の水も例にもれず、もう夏になろうかというこの時節に、なお
しかし
多少の障害は物ともせずに通り抜けてくれる、有りがたい存在だ。
徒歩によって
私はふつうに、そう考えていた。
まあ
ほぼ所持品を携帯せず、
ときには
滑落などしないよう、せいぜい気をつけながら
「これは
まあ
その馬が居なかった。
それを
と言うよりも木へ
こんな何もない場に、
予測されていたという事だ。
敵方には、
そう
やれ、本当に毎度々々。
何者かが馬の
切られている留め
この、若い男だったそれは、もう動かない。
「……」
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