13.問題 ゠ 勝てばそれが正しいことになるか
13.問題・前 ゠ 処理と不快の話
「研究は、楽しいか?」
私の判突きを
「あ、はい。そうですね、それなりに。……これも
「そうか。それならそれは、いいんだが。しかしそんな事までを、お前が主導しなければならないのか?
「あ、はい。言いたい事は
少女のその言葉に少なからず、私は
もちろん末端員に至るまで、総員
とは言えふつうに考えれば、頭脳として機能する人材が多ければ多いだけ、処理能力も高まることが期待できるはずなのだ。
それでも、一騎当千の英雄が一のままで
だから、その選択
または、そういった事に思慮を周せないほど、
それくらいしか挙げれないが、しかしその前者はかなり、考えがたい。
「何をそんなに切迫しているんだ? 例の新魔族とやらには、そんなに追い詰められているのか?」
しかし、そんな疑問を口にした私に対し、やや文脈を追うのが困難な返事を、少女は
「これも
「うん? 何の話だ? いま見ている、その書類に書かれた話か?」
「いえ、これじゃあありません。つまりええと、そうですね……」
「ん?」
そこで少女が手を止めて、頭の中を整理するように
そうして出てきた言葉が、こんな感じのものだった。
「はい。私はそれなりに頭が周るようだけど、でも大人数で当たったほうが、問題解決は早いはず。なぜなら一人が動いてる
「! ……」
その少女の言葉が、私を絶句させるに十分の効力を持っていた事は、言うに及ばなかろう。
「当たってましたか」
「あ、ああ」
何事か、はてこれは。
「ごめんなさい。何事かって思ったとは思うんですけど、私が何かを人に任せれないのにはいろいろ、理由が
「どう、とは?」
「不快に思いはしませんでしたか?」
「……」
どうだろうか。
いや、そのとおりではある。
単にそれを
確かにそんなようなものを、
あるいは人によっては、我慢ならない事であるかもしれない。
「人が言われて不快になる言葉は、いくつか有ります。たとえば
「なんというか、それは当たり前だな」
「はい。ただそれ以外にも、たとえ悪気が無くっても、大まかに、お前など
「直接言っているわけでなく?」
「今みたいに考えを言い当てられるとか、
「ああそうか。そうだな、
「それが普通です、自分の弱さを引き
「ほう」
「そこじゃあ意見を戦わせるのが普通ですけど、状況なんて常に一つしか、存在しないわけですからね。だから問題に対する正解なんてものも、常に一つくらいしか存在しないんですけど」
「ああ、それな。正解は一つでは
「ええ。前提が定まれば正解も、一意に定まるものですよね。ただ、その正解をはっきり言っちゃうと、それが正解であるだけに、さっき言った理由で相手の
「む。難しいな」
「それが積み
ふむ。
とりあえずそこは、不和は極力
「しかしだからこそ、逆にもっと皆と、話し合いを持ったほうがいいのではないか?」
「そこが、むしろ逆なんですよ」
「むしろ、逆?」
「はい。人を動かしたいなら基本的に、判断をさせちゃあいけないんですよ。人へ完全に任せちゃっていいのは、委任した結果に口出しする必要が無い場合だけ。つまりは
「部下に判断をさせては、いけない?」
これは
理由がさっぱり
少女のその、常識とかけ離れたことを言う姿勢は、最初からずっと変わっていないと言えば、まあそうなのだが。
それにしてもこれは、不可解である。
「どういう事だろうか。大体それではまず、お前の負担が一向に減らないのではないか? それにそんな事では、頼ってやらないのなら、それだけで信頼関係に
いやべつに敵、それもその総大将なのだから、これを案ずる義理など有るはずも無いが、気になるものは気になる。
判断させず動かすとは、つまり皆のその思考を無視し、意に反した行動を取らせる事にならないか。
その方針によって、配下らに無体をはたらく事になってしまっており、結果として恨みを買い
そんなふうに想像されたのである。
この少女は
人柄としてもこれといって、
そんな人物が、これだけ腐心を
それは利口なやり方で
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