2.憂鬱 ゠ 名は体を表すか
2.憂鬱・前 ゠ 盟友と武器の話
押していた。
この戦局はもはや、どう転んでもこちらの物だった。
だから
「はっ!」
──
「ぐぁっ!」
短い悲鳴が
それでもなお、他が私へと
だから私はあのように、剣を
──ざわ、ざわわ。
天高く、
その
いま眼前に、そっと
野石で組んだ
「スィーエ。お疲れ」
「ん? ああ」
火を
いや、
見事な金の長髪と、
ついでに
そんな彼女、私と
とは言っても、特に私への同性愛を抱えている、という事でも
おまけにその際、あなたこそ男に言い寄らないのかしら。
そんな言葉が返ってきたから、今の私にそんなつもりは無い。
そう述べるとどうしてか、失意と
やはり、よく
野営……とは言ってもここでの戦いは、陣を張るを
それでも、
私としてはこのように、
ここら一帯、
ちょっとばかりの浪費くらい、許されるだろう。
すこし離れた場所へ目をやれば、同じように穏やかに、その身を休める者たちの姿がみられる。
ほか、死ぬか生きるかの場に
良く
こちらと目が合うや否や、まるで
よく有る事ではある。
そんな様子をやはり
「また今日もお手柄。あんな
「
「あ、うん。要る」
普段から合切を持ち歩いている私と違って、彼女は
それも
近くの小川の水を火にかけて
鮮やかに紫色で目に楽しく、鼻のとおる良い香りがし、ほんのり
その野草も、普段であれば陰干しし、乾燥させてから煮出すが、今これはそこかしこ、景気よく
生のままのそれも
細かい点を挙げるなら、このように川も
ほか岩地や
見下すわけでは
よって、広範囲をこう
だから敵は、およそ何らかの計を
ただその一点のみであって、そのつもりで注意を払っていれば、現実に選択
発見もそう難しい
他の
私が見つけたのは
そんな事を頭のなかで独り
「んー。もうちょっと砂糖」
「まだ足りないか? けっこう入れたぞ」
「入れるの」
こうなると聞かない。
安いな美顔。
いや、砂糖も貴重品であるから安くは
「しっかし、
「まあな。ある日突然、青くなったりしたら気持ち悪いだろう?」
「……ねえ」
「うん?」
「見せて?」
「……」
何を、とは
紫、との言葉が有ればそれで十分だった。
私は剣を、取り出してみせる。
いや。
取り出す、という言葉は
「うん。……紫だね」
「そうだな」
その剣は、何もない所から出し抜けに、音もなく現れた。
詳しい仕組みはまったく
我々があつかう武器とは、理力を練ることによって発現した物なのだ。
ただそれは、
触れれば硬く手応えはあり、見た目としては
威力をのせるには
意思によって形作り、また消し去ることが
ところでその得物は、たいがいが
ここから
そこを剣というのは、珍しい部類なのである。
だから矢などの飛び道具には向かないが、それでも戦闘という場においては、より間合いの広いほうが優位なのだ。
つまり武器とは、より有利に戦闘を運ぶための道具。
それこそが、有効射程の長さこそが、武器の強さというものの本質なのである。
そして都合の良いことに、理力による発現物は重みが
もちろん、発現できる大きさにだって、限度は有るもの。
ほか、
ゆえに
くわえて剣最大の特徴である、
これが静物に対してはもちろん、動きまわる敵が相手であれば
つまり、
無論、剣だって
それでも、重みなく形状自在な理力、これが存在する状況では
だから、私のように剣とする者は、
あえて選ぶとすれば、それは飽くまで趣味の範囲において。
実戦で剣を取ろうという者の候補を挙げるなら、近辺では今ここに居る、アンディレアくらいのものだ。
彼女や私がそうしているのも、純粋に好みというか、信条の問題。
それだけでは困る事ももちろん有るから、彼女は
そんな感じで、私の剣は珍しいと
「んー。やっぱり私だと、こうなのよねえ」
これだ。
理力の発現物はその色が、今こうやってアンディレアが発現させたそれのように、
むこうで
厳密には
ただし例外としてごく
この色は
そのためこれは、血統の
紫だけは、どこを探しても例を見ない。
変わり種だ。
聞くかぎり……史上初、らしい。
どうしてそうなったのかは
そもそも、色になにか意味が有るのかどうかすら、不明だ。
このアンディレアが金髪であり、この私が
「ん? なあに?」
「いや」
「ふうん?」
私がアンディレアの髪へ、なんの気なしに目をやったのが気になったようだが、たいした理由が
まあ、そういった感じの間柄である。
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