第5話:再思考

しかし、今回のこの失敗でもうあの学校には戻れない。

自分の失態で自分の居場所をなくしてしまったのだ。


「…そうだったのね。殺し屋にも一応人の心があるものなのね。」

「殺し屋を何だと思っていたんだ。」

「え?冷酷で惨忍な鬼畜外道人種」

「ひどい認識だなぁ…」

「でもまぁ…あなたを見て少し認識が変わりました、殺し屋といっても優しい人がいたんですね。」

「………」


なんかちょっと感動した。


「まぁ、正直余計な優しさでしたけど。」


感動を返せ。


(まぁ、彼女からしたら無駄な優しさだったのかもしれないな…)


「…殺してやれなくてごめんな。」

「ぷっ…なんですか?その謝罪は?」

「笑うことないだろ、お前が殺して欲しかったって言ったんだろ?」

「確かに、正直私は殺して欲しかったです。」

「だろ?だk………」

「でも、あなたと話してみて、もう少し生きてみてもいいのかなって、思えましたよ。」

「……そうか。」


なにか理由があったわけじゃない。

ただ空虚な感情からくるような涙を見て、殺すのを躊躇った。

捕まって、死を覚悟したけど、彼女に助けられた。

別に彼女になにか特別な感情を抱いているわけでもない。

だけど、彼女が生きたいと言うのを聞いて…

なぜか、嬉しかった。


その会話の翌日。

俺は正装をして、彼女の部屋の前に立っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る