第9話 いい思い出になるものです

「セラフィ様、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」


「本当ですか?池に落ちただけだと思うのですが...」


「ふふ、あれもいい思い出です」


「いい思い出だなんて、恥ずかしいので忘れてください!」


「それは無理なお願いです。それにあの場所はとても気に入りました」


「また来てください。一緒にあの場所に行きましょう」


「今度は落ちないでくださいね」


「もお!落ちませんよ!」


 冗談を言って笑い合えるくらいには仲良くなれたな。


 最初にスティードに会った時は全然表情が変わらない人だと思っていたけど、今ではスティードの表情は柔らかくなっていて好印象だ。


 年相応くらいには笑うようになったか?


 ある意味池に落ちて正解だったな。


「セラフィ様、これを」と言って俺に渡してきたのはビー玉くらいの大きさの青色の石。


「これを肌身離さず持っていたら願いが叶うみたいですよ」


「いいんですか?こんなに綺麗な物を頂いて」


「はい、ぜひ貰ってください」


 そうゆう事なら俺も何か渡した方がいいかな、友情の証として。


「なら私はこれを」と言って髪につけていた桜の花びらの髪留めを外してスティードに渡す。


「ありがとうございます。毎日これを見てセラフィ様の事を思い出します」


「は、はい」


 あまりにいい笑顔で言うもんだから恥ずかしくなってしまう。


「そろそろいくぞ、スティード」


「はい、お父様」


 馬車に乗り込んだスティードは窓から手を振ってくれた。


 俺も手を振りかえし、馬車が出てからもスティードがこっちを見てる気がして俺は手を振り続けた。

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