第7話 お気に入りの場所で 下

 大丈夫ですか?と差し出された手を取り俺は立ち上がる。


「可愛い声を出すんですね」


「なっ何言ってるんですか!」


 立ち上がった今もなかなか手を離してくれないスティード。


 もう大丈夫だし、こけたりしないってば。


 というか、恥ずかしいわ!


 男から可愛いと言われて顔が熱くなるのを感じる。


 自分で可愛いって思ったりして鏡を見たりしてるけど、家族や親しい人以外に...それも男に言われると嬉しい気持ちもあるし、変に照れてしまう。


 別にスティードに言われたから照れてるんじゃないし。


 あんまり表情が変わらないスティードが女を殺すような笑顔で急に可愛い声だとか言うからビックリしてるだけだし、それだけだし。


 自分が男だろうが女だろうが相手に可愛いとかイケメンだとか言われたら嬉しいだろ!照れるだろ!


 頭の中で言い訳をしているとリミアが「お嬢様、スティード様!」と慌てて近寄って来た。


 ナイスタイミングだリミア!


 これ以上スティードの女をたらしこむ笑顔を見たら俺が女になってしまう。


 いや、身体は女だけど。


「スティード様の笑顔は反則です!自覚してください!」


「セラフィ様も反則です」


「?」


 ん?なにが?


 リミアや駆けつけてきた他の使用人に俺とスティードは連れられて着替えに向かった。


 スティードは馬車に積んであった服に着替えたみたいだ。


 俺はお父様に叱られた。


 お父様には軽〜く叱られただけだったけど、リミアにこってりしぼられた。


 バウマンさんはスティードを見て嬉しそうに笑っていた。

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