第6話 お気に入りの場所で 中

「スティード様は毎日が忙しいんですか?何も考えずに空を見たり池を見たりして気分を落ち着けたりする時間は無いんですか?」


「そうですね、あまりそういった時間は無いですね。私の家は商人の家系ですし様々な所に行ったり、毎日学ぶ事が多いです」


「ふーん、いろんな所に行けるのは旅行みたいで楽しそうですけど、勉強は嫌ですよね。わかります!」


「旅行...私も最初はその様な感覚を持っていたかもしれません。ですが、商談が終わると次の場所へ、そしてまた次へと行くので旅行なんて楽しいものじゃないですよ」


 寂しそうに見えたスティードの横顔、スティードはしっかりしてるけどまだ5歳だもんなー。


 バウマンさんの為に頑張りたいって思っていていも心のどこかで甘えたい、遊びたいって思っているんだろう。


「甘えたい時は甘えて、遊びたい時は遊んで、勉強が嫌なら逃げればいいんです。私みたいに」


「そんな事出来ませんよ。お父様をガッカリさせてしまう」


 この世界の5歳児ってこんなにしっかりしてるものなのか?


 んー、スティードは仕事について行く事が多いみたいだしそのせいかな。


 仕事の現場を多く見てるせいか自分もしっかりしないとって思ってるのかもしれないな。


 そんな事考える必要ないのに。


 まだまだ子どもなんだからわがまま言って甘えればいいんだよ。


 俺みたいにな。


 今日はいっぱい遊んで気分転換させてやろう。


「そんなに思い詰める必要なんか無いですよ。子どもは子どもらしくやんちゃしてればいいんです。だから今日はいっぱい遊びましょう!」と言って立ち上がる。


 その時ハンカチに足を滑らせてしまった。


 遠くでお嬢様!っとリミアの声が聞こえる。


「きゃあ!」


 バシャン!と音を立ててお尻から落ちてしまった。


 つめたい、いたい。


 てゆうか、きゃあって言ったか?


 とっさに出る声がきゃあ...。


 そんな事を考えてボーッとしていたら、なかなか立ち上がらない俺を見たスティードが心配して「大丈夫ですか?」と自分の服が汚れる事を気にせずに池に入って来て、俺に手を差し出した。

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