番外編

抱いた思い(前編)

 女子大学生、藤原妃里亜を殺人容疑で取り調べ中。彼女は殺人容疑を否定している。


 取り調べは冬月シバ。


 報道で出回った写真では美しき社長令嬢とは思っただが目の前にいるのは金髪の髪の毛も手入れをしておらずバサバサ、涙と鼻水で顔も化粧っけもない女がいて少しがっかりした顔でいるのは警察一の色男冬月シバだからこそだろうか。


「あの男から先日プレゼントとして大きなぬいぐるみが置かれていたのです……大学に行っている時にメイドさんが運んだんですの」


 彼女の部屋はシバも現場を訪れてそのぬいぐるみの数にはアンティーク美術館かと思うほどであった。


「昔から親から寂しくないようにってぬいぐるみをくれたのよ」


 現場でとてつもない匂いのする某大型スーパーで扱っている成人男性サイズのクマのぬいぐるみがあった。


その中で死んでいた男。以前から妃里亜が警察でストーカー被害を訴えていたのだが改善されなかったという。

クマのぬいぐるみが配達されて部屋に運ぶというセキュリティの甘さと言ったら、とシバは鼻で笑ってしまった。


 他のぬいぐるみはボロボロでパーツが取れて年季の入っているものばかり。アンティーク調に見えたのもそのせいだろう。


 クマから見つかった男の死因は暴行によるクモ膜下出血。相当の打撃数だったという。


「ちょいと憶測になるけどストーカーだった結城嘉次郎が先にぬいぐるみを送り、後日君の部屋に忍び込んでそのぬいぐるみに入り込んだ」

 人が入るくらいの空洞があり、小柄な男は余裕で入れた。それにしてもストーカーも度がいきすぎている。クマの中に入るとは。

すると妃里亜は笑った。


「あいつもバカよね……あの時私はむしゃくしゃしてたのよ」


 彼女の顔は豹変した。シバは冷や汗をかく。


「だからいつものようにぬいぐるみに八つ当たりしたの。そしたら……あのぬいぐるみから変な音と感触。でも止められなくてなんだかんだしてたら中でやつは死んでた、ぬいぐるみの中で」


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