第三話
別の取調室。
シバがいる。目の前にはとある女性が座っている。
「……まさかこういう形で再会とは」
「ですね」
その女性は夕方の式でシバとすれ違った新婦の有紗であった。
とてもバツ悪そうな顔をしているが、彼女は式中に傷害事件を起こした。
「お姑さん、命取り留めましたよ……」
「……はぁ」
「はあって」
有紗はため息をつく。美人な新婦であったが事件の一報を聞きつけて駆けつけたシバたちが見たのは血まみれのケーキ入刀用のナイフを持った有紗がものすごい血相で立ち尽くしていた。
義理の母に切り付けたという。
「……あの女、最後の最後まで口出しして。修二さんもあっちについちゃってさー。だから私は結婚式挙げたくなかった。2人でこじんまりとね、婚姻届出してお祝いしたかったけどあっちの親たちは見栄張ってこんな広いところであっちの仕切りでやったから。最後の最後まで耐えてたけどお色直しの時にいきなり姑が息子と出たいわーとか言うもんだから腹立ってね」
「腹立って切り付けたのか……」
「うん」
彼女もあっさりと。
「まぁ結婚式してなくても姑さん切り付けてだけどね」
「……てことはこうして会えるのは必然的だったかもね」
「ふふふ、そうね。できれば取り調べ室以外で会いたかったわ」
有紗は苦笑い。シバもつられて。
「なにも君の特別な一日に犯行を犯さなくてもねぇ」
「そうね……バカみたい」
有紗の目から涙が流れていた。
結婚式、それはそれは2人にとってもいや周りの家族や友人たちにはとても嬉しいことであろう。本当に特別なことだ。でもその特別な日は他人からしたら違った日でもあろう。
35歳、人生のターニングポイントの年に元恋人が結婚されて辛い日、だなんてこともある。
まぁそんなのは良き特別な日を迎える人たちにはわからないであろう。
シバはその後、幼馴染と結婚をするのだが数年後に離婚する。(シバの不倫が原因)特別な日って……なんなんだろうなぁ、とたまにこの事件のことを思い出すのであった。
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