第二話

「はい、私がやりました」

 あっさりと犯行を認めたのは結婚式場の統括マネージャー、桐崎だった。

 全ての式が終わり出頭という形で。

 髪を引っ詰め、夜会巻きにしピシッとしたパンツスーツ、黒のヒール、整ったメイク。まさしくプロであった。まだ若そうであるが35歳とのこと。勤務歴も長い。


「そんなにはっきりと映ってたとは。わたしも不覚でした……一番式場のこと詳しいはずなのにね」

 と笑っている。


「新郎の幹也とは結婚の約束していたのにこっそり合コンして新婦と出会って妊娠させたから別れてくれって言われてね。もう10年も付き合ってたのに30半ば……ここまで引きずって別れろって最悪。本当は2人を驚かせるために花火を暴発させたけど……他の人を巻き込んでしまったのは……」

 桐崎は気丈に振る舞うが涙を流す。


「……あいつらにとって特別な一日だったろうけど見せびらかしのように私の式場で式を挙げるなんて。とんだ迷惑だったわ……しかも私の誕生日だった。35歳の……アラフォーよ。……せめて、式場に迷惑かけたくなかったから最後まで他人の特別な一日を最後まで見届けた……」

 彼女の声は涙声になる。


「もう引退を考えていて退職予定でした。上からも反対されていて半年、一年先延ばしされたけど六月も過ぎたし……そんな矢先にあいつらの結婚式やるって。それさえなければ普通に退職していた。それにライフプランではもっと早く結婚して仕事を辞めて子供も産んで育てたら今度は結婚式場でなくてウエディングプランナーの卵たちを育てる学校で講師になろうと。だって式場は土日休みがないもの、学校の先生だったら休みもあるし。あいつらのせいで、私の人生めちゃくちゃ!」

 と桐崎は机に泣き突っ伏した。女性警官たちに宥められるもののしばらく何も話せそうになかったが、ようやく落ち着いたところで彼女は言った。


「あの……夜の部での披露宴会場での事件はどうなりましたか?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る