過去の事件12 結婚式場演出花火暴発事件
第一話
大きな結婚式場、土日ともなると何組かのカップルが一日に式を挙げる。
家族だけでなく親戚、友人、会社関係者など出席者も多くそれ以外にもスタッフ、料理人、業者の出入りも激しい。
夜にも関わらずどの会場もいっぱいなのだ。
「人が多いなー。あっちもこっちも。施設も広いし金かかってるんだろうな……」
「シバさん、午前の事件は怪我人がでたのに営業してるんです」
と刑事冬月シバについて行く部下の
「演出の花火が暴発……新郎新婦には怪我なし、新郎の高齢の親戚の1人が発作を起こしたけど現場での応急処置で命は取り留められたのは奇跡だな。他にも怪我人数名いたが軽傷……映像見る限り酷かったのになぁ。心の傷は負うだろうが」
「もし万が一亡くなってたら……」
「この結婚式場の経営する葬祭でお葬式」
「シ、シバさぁん……」
事件があったのにも関わらず、式をやっているとは、と呆れているのはシバだけではない。
ロケーション抜群、駅からのアクセスも良く結婚雑誌にはトップで掲載されるほど人気の式場である。
そのため事件が起きても式場を閉鎖、というわけにはいかない状況であったという。
なんとか事件現場以外のスペースを使って、尚且つ他の式と重なり合わないよう誘導する式場スタッフたちの努力は凄まじいものであった。
「さすが結婚式のプロですなぁ」
「さっきもスタッフの控え室もタイムテーブルがぐっちゃぐちゃでしたし、戦場さながら……」
「表では華やかな結婚式やってるのにな、裏で起きたことなんぞ知ったこっちゃないなー」
「ですよね、ほんと。にしてもみなさん本当にプロだな」
シバたちはキョロキョロしつつも特別な日を迎える新郎新婦のために見えないところで走ったり、誘導してる人たちとすれ違う。
式場の人からも刑事ぽく見えないように、とも言われたためまともなスーツを着てきたのだが着こなし方からして警察一味は浮いていた。
「さてさて、俺らも警察のプロとして働きますか」
「はいっ、もちろんです!」
とすれ違う花嫁。モデルのようにスラっとしていてお人形さんのようである。
演出のためいかにも警察な2人と鉢合わせになって一瞬花嫁はたじろぐ。
シバは花嫁と目が合い、彼女のドレスから覗かせる白い肌と鎖骨、胸の谷間にドキッとすると花嫁はシバを見て赤く頬を染める。
シバはぶっきらぼうだが色男でなぜかモテる。
「あの子、めっちゃタイプ」
「シバさんっ!」
「すまんすまん……」
と事件現場にたどり着いた。
「たく、裏口から遠いっつーの」
「しょうがないですよ……」
だだっ広い披露宴会場。奥には大きな階段がある。他の式場は人がごった返していたのにここだけは警察関係者がいるだけで静かである。隣かその隣の会場からの音漏れはあり、他の人たちは祝われているのは伺える。
「映像もさっき車の中で見たけど……ある程度目星はついている」
「重要参考人は今他の式場で指揮をとってるようで」
「あほ、茜部っ。逃げたらどうするんだよ……早くそいつ捕まえてはかせろ」
「いやね、私がいないと今日の式回らないんですーって……でも大丈夫です。数人張り込んでますので全部の式が終わり次第事情聴取しますから」
「たく、指揮くらい他のやつに任せろって……はぁ、式と指揮? 混乱するな」
「まぁまぁ落ち着いて。映像からしても演出の花火をセットしたものに近づいていたのは彼女だけでしたからね」
「……式場の人間なのにカメラの位置には気づかなかったのか」
「あ、その映像は式場のでなくて参列者の友人数人がプロのカメラマンで色んな角度から撮りたいとカメラを置いていたそうで。新郎がテレビ番組ディレクターだから映像関係に関してのプロの集まりだったんですよ」
「なるほど」
「当日置いたそうで……定点カメラだったそうですが短時間でビデオを見返して警察に提出してくださりました。そこまで把握しきれてなかったようです」
「なるほどねぇ、式場のプロ……完全犯罪には至らず……だな。カメラマンには感謝だな、くっきり写ってた」
シバは鼻で笑った。
「にしても花火自体に当たったものはおらず、もみ合っての転倒、心臓発作のみで運がいいものだ……火事にもなりかねない」
「ですよね……鑑識からは火傷だけでなくて大怪我が起きてもおかしくなかったと」
「痛そー」
「痛いで済めばいいですけど。ちなみに新婦側は看護師。参列者も病院関係者で誘導も処置も速やかだったとか。さすが医療のプロ!」
「……テレビディレクターと看護師……合コンでの出会いか? 新婦めっちゃ美人だったやんー」
「そこですか?」
シバの変な考えに相変わらずだと呆れる茜部。
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