第二話
そしてシバはとある建物の前に車を停めた。そこは日中張り込みしていた図書館だ。わざわざ引き返したというのか。
シバは腕時計を確認する。
「そろそろか」
シバはどうやら誰かと待ち合わせしているようだ。
そして待ち合わせしていた時間。図書館の裏口から出てきた1人の女性。
そう、あの読み聞かせをしていた司書の女だ。仕事を終えて結っていた髪を下ろしてラフな格好で司書でいる時もだがこの姿も魅力的だ、とシバは感じる。
「おまたせ、冬月さん」
彼女は微笑んで助手席に乗り込む。
「おう」
シバはすぐ車を走らせる。
向かった先は市境を越えてすぐのラブホテル。車を停めて部屋を選び、エレベーターに入った瞬間に2人は抱き合いキスをした。
なぜシバが警察が張っている女と……。
この女、杉立梨花は結婚詐欺師として多くの男を騙しているとのことだったが、なかなか決定的な証拠が掴めなかったのだ。
シバは最初、何度か仕事終わりにもあの図書館に行き動向を伺っていたが、いつしか梨花がシバに気付く。
そしてとある夕方にすれ違いざまにシバは彼女から連絡先を渡され、そこに連絡し今日落ち合うことになった。今日張り込みしていたのも梨花は気づいていた。ただし張り込みであることはバレていないようだが。
しかし落ち合いすぐラブホテル、エレベーターでキス、部屋に入って玄関先で……という展開の速さはプレイボーイなシバならではであるし、やはり結婚詐欺師という疑いもある彼女ならではでもある。
玄関で行為も終わり、すぐさまシャワー室、なんだかんだで1時間後にようやく2人はベッドで落ち着いて横になった。
シバはタバコを吸いながらも横にいる梨花がほんとうに結婚詐欺師なのか疑う。
見た目は地味だが、それでもうちから滲み出る魅力。
被害届では被害にあった男性によるととても美人であると書いてある。
元は美人な顔立ちだろうからメイクをしなくてもそれなりに良いのだが、化粧映えする顔なのであろう。
シバはタバコを灰皿になすりつけて再び彼女と……。
彼女による結婚詐欺は、実は単独でなくて複数の女性によるものであり、梨花が首謀者であった。
騙された男たちは結婚をしぶり、独身貴族として謳歌している30代から50代の男たちばかりであった。
綺麗な格好をしていい言葉をかけられたのなら貢いでしまうよな、とシバは梨花に腕枕をしてやる。
「なんで俺なんかに相手するんだ? 金なんてないペーペーな男だ」
そういうと梨花は笑った。
「お金だけじゃない、わたしは冬月さんと一緒になりたいって思ったの。女の本能」
シバはそれ聞いた瞬間にこれは男たちは騙されるな、とまた思った。
「だったらなんであなたは私と出会ってすぐここに連れ込んでキスしてこんな関係になったの?」
それはなぁ、とシバは笑った。
「俺も本能だよ」
そう言った時に梨花はふうん、と返した。
「なんだよ、そのふうんってさ」
「……なんか今までの人たちとは違う。冬月さんは」
意味ありげな微笑みを彼女はした。その微笑みは何故かシバの頭にすごく残ったのだ。
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