第16話 久しぶりのベッドイン(R指定)

 例の部屋に入るなり2人は先ほどよりも濃厚にキスをする2人きりと言うのもあってなおさら音をたて、粘液を交わす。


 何度も抱きしめ合い、近い距離で見つめ合う。シバは数時間前に看護師の女性を抱いたばかりなのだがそれとは別腹のようだ。久しぶりのリヒトの身体を抱きしめ、彼にまとわりつく独特な香水を間近で感じて、あぁ、久しぶりだ……とシバは光悦する。

 

 リヒトの耳を舐める。彼の耳には無数のピアスとピアス痕。リヒト曰く愛し愛された男の数だけ穴が空いていると。

「ああああんっ!」

 リヒトは耳が弱く、たくさん喘ぐ。シバはそれを知っていて舐める。


 男の身体はリヒトだけしか知らないがずっと女の体しか知らなかったシバはすぐにリヒトの虜になった。


 かといって他の男の身体を知ろうとはしない。男の身体を味わうのはリヒトだけで十分だと。


 それだけ魅力的で他にはない、女にはないものをリヒトは持っていたのだ。まだ知らない彼のことを欲しい、欲しい……。シバは久しぶりに抱く。


 恋人のまさ子、他の女性たち……彼女たちも大事だがリヒトも愛おしい、特別な1人。シバはずっと抱き締める。


「いつまで抱きついているのよ」

「あぁ、この温もりの余韻を味あわせてくれ」

「それもいいけど……もっと……」


 再びリヒトはシバにキスをする。何度も唇を交わす。ゆっくりとベッドに倒れ込み脚を絡ませあい、シャツもボタンを次々と外していく。本当のところシャワーでも浴びたいところだったがもう我慢できなさそうなリヒトを見ているとそんな場合ではない、シバはリヒトの首筋にキスしていく。


 ふと気づく、自分が吸い付く前に付いていた赤い跡。キスマークであろう。何度も彼につけたこともあったし付けられたコトもあったというのも思い出すが胸元にも同じように赤い跡。もしかしてと思いシバはリヒトの服を捲っていき、リヒトの白い肌を露出させていく。

「シバ、どうしたの……あっ!」

 シバはリヒトのズボンんベルトを勢いよく外してズボンを一気に下ろした。リヒトは腹部から下腹部にかけて広範囲に黒の模様のタトゥーが入っている。昔彼が彫り師だったらしく、白い肌にはそぐわない荒々しいものである。

 そして彼の股をぐっと開いて内腿にもいくつか赤い跡。そして鼠蹊部あたりにも……そして……。


「気づいちゃった?」

 上半身は着衣したまま下半身は露わになった状態でリヒトは身体を起こした。

「あなたが入院中にね、セフレくんといい感じになって……あ、その彼はノンケくんでさぁ。タチでもネコにもなるかどどっちかといえば私がタチになることが多いかなぁ……」

「はぁ」

 いきなりの告白にシバは言葉が出ない。


「それに他のセフレに挿れてもらっても満足いかなくって。オーナーとも朝したんだけどね。あ、このキスマークはノンケくんの。すごく残っちゃって恥ずかしい……。夜から朝までベタベタ甘えてきてくれて超寝不足なんだ……彼ったら結構独占欲強くて」

 とシバの上に乗っかる。

「じゃあ久しぶりじゃないからスムーズに入るってか? この遊び人がっ」


 シバはリヒトがかなりの遊び人だと言うことは知っていた。だがこんなに執着とした跡を残すような人はいなかった


「自分だって。どうせ看護師さんともしてたんでしょ……入院中も……」

「あぁ、そうだよ……だけどお前の体が一番最高だ」

「言ってくれるじゃない……ふふふ」


 再びキスをし、シバはリヒトを押し倒した。そして他のところに何箇所か赤くキスマークを残した。

「いたぁい……っ」

 と吐息混じりで訴えるリヒトをよそにたくさんたくさん。彼は自分のものだと言わんばかりに。


 するとリヒトに頬を両手で挟まれる。

「やめなさいよ」

「やめないよ、見せつけてやるんだ」

「は?」

 さっきまでうっとりしていたリヒトの顔つきが変わった。


「……私ね、今度その彼と正式にお付き合いするの

ー」

「はっ?!」

 するとリヒトは少し体離した。

「付き合ってる人とは無理?」

「いや、そのー」


 ふぅん、といいつつもそれよりもリヒトの身体が欲しいシバはリヒトの身体を引き寄せようとするが


「……そうか、シバはその気でもなかったよね。うん、残念ね」

「は? どういうこと?」

 リヒトは眉毛を下げた。

「そうよね、わたし男がだから一緒になるってこと考えないわよね。所詮私はあなたのセフレ……」

「何いうんだよ、お前こそ俺のことセフレってしか思ってないだろ」

 リヒトはため息をついた。


「はぁ、じゃあもう挿れるだけ挿れて帰ってー」

 確かにそうである、とシバは思うが嫌々としようとしてるリヒトを見てなんでそんな顔をしてるのかわからなさそうである。


 そして二人久しぶりに混じり合うが、抱かれるリヒトはシバに見られないように悲しげな顔をする。


「あなたはもう分かってない、何も」

「なんだよ」

「なんでもない……そいや奥さんがお腹大きかったけど、結婚するのかしら」

「ああ、子供生まれるからな。結婚しなかんな」

「……結婚しても、私のところに会いにきてね」

「不倫になるなぁ」

「フフっ」

 そういうリヒトの目から涙が流れたのがシバにとっては意味がわからなかった。


 リヒトはシバと本気で一緒になりたかった、それだけだったのだ。

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