第15話 バーにて
シバは一番爆弾の近くにいたのだが家具や立ち位置などいろんな偶然や軌跡が重なり死には至らず生き残った。半年以上治療がかかったが。
「てかまさ子さんのほうは体調どうなんだ?」
「母さんに聞いたら過労で切迫早産、絶対安静……」
そう、まさ子はシバとの子供を妊娠していたのだ。そして今日お見舞いに来れなかったのも数週間前に異変に気づいた彼女は病院に行きそのまま入院になってしまったからだ。
「お見舞いに行った時に彼女は献身的にお前の世話をしてたなぁ。無理が祟ったな。事故前に彼女は妊娠して……あやうく未婚の母になりかけてたもんなまさ子さん」
「妊娠してることは知らなくてさ。てか退院してすぐもう俺父親ですとか実感がない。それにちょっと今の時間は検査で夕方からしか面会できない」
2人はまだ結婚をしていない。シバが入院しているうちにまさ子のお腹の中で子供がすくすくと育っていったのである。
「まぁそろそろけじめ付けてさ、なぁ」
「……も、もちろんつけますよ」
シバは目が泳ぎながらもさっき看護師の女性を抱いたことを思い出す。
「じゃあ夕方の面会前に行くか、あそこ」
「あそこ……? 退院記念に風俗っすか?」
「こんなに心配しとった俺があほだったわ。風俗じゃねぇわ。まさ子ちゃんの次にお前を心配していたあいつのところだよ」
着いたのはバーだった。心配していたと言う相手はバーカウンターで仕込みをしていたリヒトのことだった。
「いらっしゃい……あっ……シバ!!!!」
リヒトほすぐさまシバに抱きつこうとしたが大怪我をしたこともあって気持ちをどうやってぶつければいいのかともどかしそうにし、ボロボロと泣き出した。
「お前が入院した時すぐさまかけつけたんだぞ。病院でワンワン泣いてまさ子ちゃんもびっくりしてたけどな」
そういえば、と朦朧とする意識の中で誰かが泣いている声が聞こえたがまさ子もだが李仁だったのかとシバは思い返す。
目の前でボロボロなく李仁にシバは両手広げ
「ありがとう、リヒト。俺の胸で泣け」
と言うとすぐさまリヒトはシバの胸に抱きつき、そのあと涙ぐちゃぐちゃのままキスをする。
「おいおい、いちゃつくのは2人きりの時にしろよ……オーナーも見てるぞ」
奥のカウンターで髭男のオーナーが見て苦笑いしてる。
だがそれを無視してシバもリヒトにキスをする。ねっとりねっとりと。
「久しぶりにお前の作った酒が飲みたい」
「こんな大怪我して大丈夫なの? それに奥さんのところは?」
「……大丈夫だ、少しくらいなら」
「わかったわ、今から準備する。おつまみも作るから瀧本さんも一緒に」
リヒトは涙を拭ってカウンターに入る。
「退院お祝いの祝杯ってやつか。まぁ顔出すだけだったが……まだ時間はいいのか? まさ子ちゃんの」
「大丈夫っすよ。あと2時間くらいある」
お酒とつまみを嗜み、事件のことや酒が進むにつれて入院中の看護師とのアバンチュールなことやら話していくうちにリヒトは嫉妬の目でシバを見ている。
「そろそろいくか」
あっという間に1時間すぎていた。瀧本は椅子から降りるが
「俺はちょっとまだ残ってるっす」
「早くまさ子ちゃんのところに行ってやりなよ」
「はい、はい」
お酒も二杯目のシバ。酒もタバコも控えるようにとか言われつつもリヒトはジトッとシバを見ている。瀧本は察してお金を払い去っていった。
「シバ……」
「ん?」
「開店まで少し時間あるんだ」
「おう、それで?」
「もう、しらばっくれて」
リヒトが笑うとシバも笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます