第14話 フロアボス。
「よーし、アニカいい感じになってきたぞ」
「はい! 少しずつコツを掴めてきました」
「そうか。相手を見て、斬るのか刺すのか叩くのか、それとも払うのか、見極めが大事だぞ」
昨日しっかり休んだことで、今日は朝からダンジョン攻略を開始して、今は9階層に来ている。
ここまで似たような洞窟が続いているが、階層を進むにつれて分かれ道が出てきて、それが増えていってる。
俺の性格上、一応全部の道を確かめながら進んできた。
万が一取りこぼしがいた場合に備えて、各階層を下りるときに《ロックウォール》で蓋をしながら進み、3時間ほどでここまで到達できた。
出現モンスターはゴブリン、一回り大きいハイゴブリン、そしてウルフの3種類。
ゴブリンだけの集団は出なくなり、ハイゴブリンに率いられる形で出てくるようになった。
ゴブリンはアニカの薙刀の練習台に、ウルフはミケの雷で無力化してアニタが刺す、このパターンで2人に経験を積ませてきた。
俺とミケは昨日の見張り中にそれなりに相手してきたからな。
「ユウトさん、ダンジョンには一般的に10層ごとにフロアボスと呼ばれるモンスターがいます。それまでのモンスターよりも強いので一応警戒をした方がいいですよ」
「そうだな、ありがとうニア」
ここまででそれなりに戦闘してきたから、レベルも上がってるんじゃないか?
「みんな、ステータスを確認しようか」
俺はレベルだけ 1→7
ミケは レベル 3→10 スキル C・察知〈2〉
アニカはレベル 3→9 スキル C・槍技〈1〉
アニタはレベル 3→9 スキル C・短剣技〈1〉
みんなレベルが上がっているが、俺以外は新しくスキルを覚えている。
「アニカは薙刀じゃないんだな……。まあ、薙刀は日本だけの武術らしいし、俺だって槍とか棒的にしか教えてないしな」
「我は、我の五感で敵を感じておるのじゃ、わざわざスキルにせんでもよいのにのう」
「それを言うなら俺だって剣術スキルならまだしも聖剣技だぞ、ちょっとむず痒いんだぞ! ……まあ都合が悪くならないならいいんじゃないか。それにミケはレベルも1人だけ10までいってるな?」
「まあのう、昨日の夜は結構敵が来おったからのう。むふふ~」
「アニタはねぇ~、何かシュッって出たよ。すらっしゅって頭に浮かんだよ!」
「私は薙刀のリーチが長くなってちょっと遠くを突ける感じです。エクステンドって浮かびました」
「お二人とも素晴らしいです。そのスキルを使って熟練度を上げると、また別の技が浮かんできますよ」
軽く昼食を済ませて10階層に続く坂を下ると、扉が1つだけあった。
「この階層はボスだけなのか。どう戦うかは敵を見てからだな。入るぞ! 油断するなよ?」
「はい!」
「は~い。アニタ頑張る!」
「誰に言っておる、我にかかればイチコロであろう」
ゴゴゴゴッと重い音を立てて扉が開いた。
周囲に警戒しつつ中に入る。
それなりに広い空間で、天井も高い。多少ホコリっぽい。
部屋の奥にはまた扉があり、その前で軽トラック位のサイズのウルフがグルグルと唸りをあげている。
そして、また重い音を立てて扉が閉じた。
《ロックウォール》を低めに出して視界を確保しつつ盾にする。
「あれはロックウルフと呼ばれるウルフの上位種モンスターです。身体能力も向上していますが、自分の魔力で岩を発現させて飛ばしてきます」
「ほぉ、そうか。俺やミケなら一撃そうだが……、どうする?」
「そうじゃの~、またこ奴らにやらせよう」
ミケに視線を向けられたアニカとアニタは……。
「はい! やります!」「がんばる~」と、やる気に満ちている。
「お~、昨日の初めての戦闘の時とは大違いじゃ! 愛いのぅ」
「よし!じゃあ作戦は・・・・・・・・・・・・・・・・でどうだ?」
「我の出番が少ないが……、まあよかろう」
2人も頷いた。
「じゃあ始めよう」
アニカとアニタは壁の裏のすぐ脇に控え、俺とミケは壁の上に立ちロックウルフの気を引く。
グルグルと唸りを上げ、よだれを垂らしながら一歩、また一歩と近づいてくる。
歩みを止め、飛びかかるために踏ん張った瞬間、ロックウルフの影が放射状に伸び、ロックウルフ自身に巻きついた。
対象自身の影に対象を拘束させる闇属性魔法の《シャドウバインド》を発動させて動きを止めたのだ。
「アニカ、アニタ! いいぞ!」
合図とともに2人は敵に向け駆け寄る。
ロックウルフは訳もわからず動けなくなり、怒りのまま力任せに振り解こうとしている。
アニタは鼻先にスラッシュで攻撃、アニカは目を攻撃しては離れる、いわゆるヒット&アウェイ。
2人が離れた瞬間に2人から気を逸らすために、ミケが弱い雷を打ちつける。
「よ~し、少しずつ効いてるぞ~、慌てずにその調子でな~。……んっ?」
ロックウルフの様子が変わり、頭の上に岩が現れ、少しずつ大きくなっていく。
「ほぉ、あれが飛んで来るのじゃな? 我が落とすか?」
「いや……、アニカもアニタも聞いてくれ! あれが出たら俺が落とすから、皆は予定通りやろう!」
ロックウルフの出す岩は、風で飛ばしたり、同じく岩で破壊したり、空間収納に取り込んだりして俺が排除し、ミケは暇そうにポイッと雷を飛ばす。
アニカとアニタは、ヒット&アウェイをくり返すこと10分。
ロックウルフの両目はつぶれ、鼻は裂け、目と鼻、口からはダラダラと血が流れている。
魔力も尽きたのだろう、岩も出せない。
「さあ、もうトドメを刺さないと逆にかわいそうだぞ!」
「はい! アニタ、お姉ちゃんもスラッシュ使えるようになったから、アニタと同じところを斬るわ!」
「わかった~。じゃあアニタから行くね~」
2人で相談し、アニタが首筋にスラッシュで切り込みを入れ、アニカの薙刀によるスラッシュで深くまで斬った。
ロックウルフの体力が尽き、魔石を残してサラサラと消えた。
「やりましたよ~!」
「楽しかったよ!」
10分動きっぱなしだった割に2人は元気だ。
魔石は……? ちょっと大きくなった程度だな。
「お疲れさん。2人とも新しい技出してたな?」
アニカのスラッシュだけではなく、アニタも途中で新しい技を繰り出していた。
「うん! あのね~バッテンに斬れるの!」
「クロスアタックの事だと思います」ニアが補足してくれた。
「うんうん、よくやったな」
「ユウトよ、もうちょっと我の出番があってもよかったのではないか?」
まあミケはだいぶ暇そうだったもんな……。
「何はともあれ、初のボス戦はクリアだ! ちょっと休んだら夕飯まで階層を稼ぐぞぉ!」
「「「おー!」」」
皆の息も揃い、いい感じだ。
……俺はまだ知る由も無かった、このあと姉妹ゲンカに巻き込まれることを……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます