第15話 姉妹ゲンカ勃発!
「お姉ちゃんのバカーーーーーーーーー!」
「アニタ! 言うことを聞きなさい!」
「これこれお主ら、やめんか」
「だって、アニタがわがままを……」
「アニタのせいじゃないもん!」
野営の準備をしていたらいつの間にかこれである。……なぜこうなった。
俺たちは10階層のフロアボスとの戦いの後も攻略を続けた。
11階層以降は何か景色が変わらないかなという期待は裏切られ、天井が高くなった程度で変わり映えしない道のりが続いた。ガッカリした俺の事はさておき、攻略は順調だった。
モンスターはバットという蝙蝠型のモンスターとスライムが加わるようになった。
バットは天井に吊り下がり、飛びまわりながら襲いかかる、強いというよりもある意味煩わしい存在だ。
俺の魔法やミケの雷なら容易く倒せるが、アニカやアニタにトドメを刺させるために弱らせる作業に気を使った。
スライムは、液体なのか固体なのか分からない程で、パッと見水たまりにしか見えなかった。
酸で攻撃してくるヤツや毒を持っているヤツもいるらしいが、ここらの階層にはいないようだった。
こいつも煩わしくて、床にだけいるならまだしも壁や天井にも張り付いて待ち伏せる厄介なヤツだった。アメーバのようにうねうね動き、真っ二つに切っても魔石を包む核のある側が死なずに再生しようとする。
ちまちまと体を削っていって倒すか、核を破壊して倒すモンスターだ。
索敵に適したミケとアニタに負担をかけるなぁと思っていたら
「ユウトさんの魔法でも探知できるじゃないですか。《ディテクトマジック》とか《サーチ》とか……」
というニアのツッコミに目から鱗が落ちて、3人体制で見つけるようにしてから格段に効率が上がった。
19階層まで順調に攻略し、フロアボス戦は明日、ということで野営の準備をしていたら、テントの中でアニカとアニタの姉妹ゲンカが始まったのである。
バーベキューコンロを設営をし、火を入れていてその場にいなかった俺は何事かとミケに聞いた。
「我も途中で気づいた故、理由まではわからんが寝床がどうとか喚いておるな」
******アニカの心の中
昨日はユウトさんと出会った初日。
いろいろ大変なことばかりで疲れて寝ちゃってて、どういう位置で寝ていたのか覚えていないわ……。
せっかく1つのマットで雑魚寝するんですもの、どうせならユウトさんの隣がいいわ。
アニタもユウトさんの隣を狙っているようだけど、負けられないわ……ユウトさん(の隣)は私のものよ!
頑張るのよアニカ、負けちゃダメ! ちゃんと枕で(隣を)キープしておかなくっちゃ!
******アニタの心の中
お父ちゃんがいなくなっちゃって、お家も追い出されて……、お姉ちゃんと2人で大変だった。
でもユウトお兄ちゃんとミケちゃんに助けてもらって、今はみんなで探検してる。
みんなでご飯を食べて、みんなでおしゃべりしてとっても楽しい。
寝る時もみんな一緒がいいな。……でもユウトお兄ちゃんの隣はわたしよ!
お姉ちゃんもお兄ちゃんの隣を取りたいみたいだけど、ここで引いたらダメ、お姉ちゃんには負けないんだもん!
******ユウトの目の前
「コラ! アニタ、また枕の位置動かしたわね!」
「枕の場所くらいどこでもいいでしょ! あ! また戻した!」
2人してやいやいのやってるな……、いったい何がしたいんだ。
「ミケ、これなんとかしたほうがいいと思う?」
「ふむ、そうじゃのぅ。……我がなんとかするか」
「お姉ちゃんのバカーーーーーーーーー!」
「アニタ! 言うことを聞きなさい!」
「これこれお主ら、やめんか。」
「だって、アニタがわがままを……」
「アニタのせいじゃないもん!」
******ミケの心の中
こ奴らは、誰がユウトの隣で寝るかを争うておる。
我とユウトは見張り番がある故、共に眠ることはかなわぬが、ここに来るまでは我がユウトと寝ておったのじゃ、当然付き合いも我の方が長い。
なにより、我とユウトは運命的な出会いをしておる。
ここは、こ奴らに序列をわからせてやらねばなるまい……。我が格上であるということを!
******現在
「これ! お主ら! いい加減にせぬか!」
おっ! ミケの一喝で治まるか?
「寝る位置がどうの、枕の位置がこうの……、お主らは分かっておらんようだな。今は我とユウトが見張り番ゆえ別々じゃが、ユウトと寝ておったのは我じゃ!」
ん? 話の方向性がわからんぞ? ミケは何を言ってるんだ?
「お主らは、ユウトには我がいるというのに、やれ自分がどうだとぬかしおって! ……我に伺いを立てるなら、ユウトの隣で寝ることを許すのもやぶさかでは無かったが……、我を差し置くとは何事か! そこへ直れ!」
えっ? 誰が俺の隣で寝るかで喧嘩してる? ……のか?
「ミケちゃん、うるさい!」
「なぬっ?」
「そうです、これは私とアニタの問題です。邪魔しないでください!」
「ぐぬぬ……、アニカまでこの我を……、もう許さん!」
「あ~ひへひゃん! ほっへはほはははいへ~」
(あ~ミケちゃん! ほっぺはのばさないで~)
「これ! アニカ! 尻尾を引っ張るでない! この~……」
「こら! アニタ! お姉ちゃんを叩くんじゃありません!」
……カオスだ。……女同士の戦い。……三つ巴になってしまった。
「おいおい、お前達そろそろ落ち着こうか? なっ?」
「うるさい! ちょっと待っておれ! すぐ片づけてやる!」
「そうです! これは大事なことなんです!」
「ひへひゃん! ほへはい、ほふははひへ~」
(みけちゃん! おねがい、もうはなして~)
「あ~ミケさん、くすぐったい! 尻尾でくすぐらないで~」
「おい! アニカ! そこは……耳はダメじゃ~」
……俺は何を見せられているんだ。
「オホンッ! お前達! いい加減にしないか! もう1個マットレスはあるんだ! 別々に寝るぞ? 悪い子にはケーキなしだぞー! いいのか?」
3人ともピタリと動きを止めた。
「なんじゃ~、もう終わりか……」
「え~?」
「もっと遊びたい~」
――? ……ん? ……君達喧嘩してたんじゃないの? ……遊んでたの?
「まあ、ケーキには変えられんしの。今日は終いじゃな。ユウトはお主らで挟んで寝ればよかろう。じゃが、ユウトの枕元は我の場所じゃぞ!
「「は~い」」
勝手に決めてるし……、女子は分からん。まあ、険悪にならないだけいいか。
「楽しかったね~また遊ぼうね?」
「そうじゃの~」
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