第59話

 くれないたちは、風使いの女に追いついた。

「あら、あなた。まだこんなところにいたの? 風使いのくせに、のろまなのね」

 紅が風使いを挑発した。

「あら、あなたこそ、私に気を取られて仲間を連れて行かれるなんて間抜けね」

 風使いの女も、負けず劣らずの辛口だ。紅が女と対峙している間に、高一郎はいにしえの者たちから、三人を救い出した。それを確認すると、

「さっきの続きをしましょう」

 紅は風使いの女を捉えるべく、土で覆った。しかし、女は風を使いすり抜けた。そこへ、高一郎が参戦し、風の渦で女を捉えた。と思ったが、女は逆に風を起こし相殺した。

「あら、風使いもいたのね。でも、私には勝てないわ」

 女の起こした強い風に、高一郎は吹き飛ばされた。


「情けない」

 そこへ現れたのは、高一郎の母、藤堂とうどうさき

「母さん」

 高一郎は、母に抱き留められていた。


 咲は前に出て、高一郎を手で制し、

「お前は、下がっていなさい。紅もそこをどきなさい」

「ですが、おば様」

 紅は反論しようとしたが、咲の覇気に押され、引き下がった。

「あら、あら。お子ちゃまね。ママの登場とは」

 風使いの女は挑発するように笑った。

「お前は私が捉える」

 咲はそう言って手を翳し、呪言を唱えた。すると、風使いの女の身体が、縛られたように動かなくなった。

「あんた! 何者だよ!」

 風使いの女は咲に向かって叫んだ。

「組織について、詳しく話してもらう」

 咲は女に言ってから、

「運びなさい」

 と指示を出した。すると、物陰から数人の黒づくめの者たちが現れ、呪言により縛られた女を運んで行った。

「畜生! くそばばあー!」

 囚われた女の汚い言葉は、だんだん遠くなっていった。


 咲は振り向き、高一郎と紅に視線を向けた。

「紅、お前は処刑人。あの程度の者に時間をかけ過ぎです。高一郎、お前は戦う必要はありません。藤堂家の後継ぎとして、大切な身体なのですよ。自覚を持ちなさい」

 二人にそう言ってから、咲は今井と黒猫佐久間に向かって一礼した。

「黒き悪魔と恐れられたあなたが、黒猫の姿になっているとお聞きして驚きましたが、ご健在で何よりです。そして、ついに現れたのですね。光の能力者が。また、大きな戦いが始まるのですね。私は捉えた女から情報を聞き出します。では、急ぎますので失礼します」

 咲はうやうやしく、もう一度頭を下げて去っていった。

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