第39話

 信者たちを屋敷へ泊めた翌朝、

なんじらにこれを授けよう」

 くれないは一晩かけて水晶を生成し、それを器用な榊が、ペンダントに仕上げた。紅が一人一人の首にかけてやると、彼らは涙を流し感謝した。

「精進せよ」

 そして、信者たちは旅立った。


「さてと、信者たちからの情報をまとめましょうか」

 紅は組織の情報を信者たちから入手していた。まとめるとこうだ。


組織の名は『夜明け』

規模-不明

目的-世界征服

主導者-『白き神』:白髪で肌の白い少年。瞳は青みがかった白。能力は『光』

四強-『青』:若く長身の男。能力は『水』

   『赤』:

   『黄』:

   『緑』:


 それぞれの属性の強者がいるが、彼らの知っているのは『あお』と呼ばれる者だけだという。因みに、『あか』が炎、『』が土、『みどり』が風の能力者。


「どうやって制圧しようかしら?」

 紅が思案しているところへ、

「紅様、そろそろお時間でございます」

 榊が声をかけた。

「そうね」

 紅は神のお告げと称し、悩み事相談を仕事としていた。白衣びゃくえ緋袴ひばかまという巫女姿で、相談者に的確なアドバイスをしていた。相談料は一律五千円。今日も午前、二件、午後、一件の予約がある。紅には霊感もあり、死者との対話も出来る。予知も出来るといった、特殊な能力を生かしていた。紅の家系は、代々、神社の神主であるため、このような能力が備わったのだろう。


 紅が本日、一人目の客を迎えた頃、四之宮は寝ぼけた感じで起きて、広い敷地内で迷子になっていた。

「おはようございます、四之宮様。お食事の準備が出来ております」

 そこへ、タイミングよく榊が現れ声をかけた。彼は良くできた執事であるが、出来過ぎているところが少し不気味だと四之宮は思った。四之宮の動きをどこかで見ているのではないかと言うほど、タイミングを合わせてくる。もしや、この男も能力者なのではないかと疑いたくなるほどであった。

「おはようございます」

 食堂には、四之宮のためだけに、一人分の朝食が用意されていた。こんな待遇は四之宮にとって初めてだった。幼い頃に両親を失い、そのまま組織に入り集団生活。同じような境遇の子供たちと共に育った。組織の敷地内には学び舎もあり、教師もいた。それらもみんな能力者だった。普通の人間と能力者は、共存するには難しい事だと教えられた。能力者は無能力者の上に立つべきもので、この世界を征服し、歪んだ社会を正すのだと。そこでは、師の教えが正しいのだと教え込まれた。今考えれば、あれは洗脳だったのかもしれない。自由はなく、ただ目的のために集結し、能力を伸ばし、組織のために働く。そこには個人と言う概念はなかった。今、こうして、自分のためだけに部屋を与えられ、自分のためだけに朝食が用意されている。そして何より、彼らは自分を呼称してくれている。組織内では名前など呼ばれない。個人としての自分はそこにはなかった。結局、組織には自分の居場所などなかったのだ。

「四之宮様、どうかなされましたか?」

 食事に手を付けずにいた四之宮を心配し、榊が声をかけた。

「いえ、大丈夫です。いただきます」

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