第36話
「見くびるなよ。まだ、こちら側が優勢だ」
男はそう言って、仲間に合図した。それに従い、
「高みの見物とは、いいご身分だね。君、僕より強いと思った? 風使い」
高一郎は、風使いの男の傍らに現れ、渦巻く風で男を捉えた。あまりの強い風に男の身体は千切れそうなほどに捻じれた。
「ぐっ……」
男は声も出なかった。そして、そのまま身体は引き千切られ、血しぶきが舞った。
それを見た古の者は怯え、戦いに集中できず攻撃を止めた。
「あら、気が散ったの? あなた達の敵はあたしよ。集中しなさい」
紅は攻撃の手を止めた古の者たちへも容赦しなかった。ことごとく斃され、その場に転がっていく。
「さあ、覚悟しなさい。忠告も聞かずにここに残ったことは愚かだったわね。万に一つも助かる余地はないわ。でも、ここであなた達に朗報よ。あたしは、あなた達組織の情報が欲しいの。情報提供に協力的な者は始末しないことを約束するわ。さあ、どうするか決めなさい」
だいぶ痛めつけられ、もう戦う気力など誰にもなかった。圧倒的な強さに、抵抗すら無意味だと悟った。
「ここで始末されるか、組織に消されるか、私たちにはどうせ、生きる道はない。情報提供したあと生かされても同じことだ」
彼らもまた、四之宮と同じことを言った。こんな組織に組し、忠誠を誓う価値などあるのだろうか?
「本当に愚かな者たちだわ。あたし達がその組織を壊滅させるのよ。組織から抜けたって、怖がる必要はないわ。あたしは最強なの」
紅の強い発言と、威風堂々とした態度に、古の者たちは神の降臨を見たような、羨望の眼差しを向け、信仰の対象とし崇めるようにすがった。
「紅き悪魔、いえ、紅き神よ。私をお救い下さい」
一人が言うと、他の者たちもそれに従い
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