第31話
「終了です。意外と簡単でしたね」
「ニャー」
「はい」
「終わったの? この子はもう大丈夫なの?」
「そうですね。爆弾は取り除けましたが、佐久間さんは油断するなと言っています。この子が敵の刺客である以上、こちらの情報を与えないように気をつけましょう」
「ねえ、これの能力は消さないの?」
高一郎が聞くと、
「ニャー」
黒猫佐久間が答える。
「はい。佐久間さんが言うには、この子は組織から命を狙われる危険があるとのことです。身を守るのに必要な力は残しておくべきだと」
「早く起こして、組織の事を聞いちゃおうよ。そしたら用済みで、どっかに捨てに行こう」
「お兄ちゃん、それはひどすぎるわ。この子はあたしが預かります」
こうして、少女は紅が預かる事となった。
夕方、少女がようやく目を覚ました。そばには黒猫が身体を丸めているだけで、誰もいない。少女は音を立てずに、部屋を抜け出そうとした。
「ニャー」
黒猫が声を立てた。すると、
「やあ、起きたんだね。逃がさないよ」
突然、高一郎が微笑みを湛えながら、少女の目の前に姿を現した。
「きゃっ」
少女は驚いて、しりもちをついた。そこへ、
「あら、大丈夫? お兄ちゃん、脅かしたらだめじゃない。安心して、あたしはあなたを殺さないから」
紅からは殺意を感じないが、笑みを湛えている高一郎はいつでも殺す気満々なのを、少女は肌で感じて怯えた。
「お兄ちゃん、この子を傷つける事はあたしが赦さないわよ。ほら見て、こんなに可愛い子を殺しちゃ、もったいないわ」
紅の感覚も、少し異常で、それにも少女は怯えた。
「二人とも、少し離れて、黙っていてくれますか? あなた方は感覚がずれているんですよ」
今井はそう言ってから、少女にソファーに座るよう促した。
「榊さん、彼女に何か飲み物を持ってきてください」
「かしこまりました。紅茶で宜しいでしょうか?」
「それでいい?」
今井が少女に聞くと、彼女はコクリとうなずいた。紅と高一郎は、少女から一番離れた場所に座り、今井は少女の隣、黒猫佐久間は、今井の膝に座った。
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