第15話

「始まったようだな」

 篠崎も見物に来たようだ。ここに古の者が揃った。風を操る高一郎、水を操る篠崎、土を操る佐久間に、火を操る紅。ただし、紅は全ての能力を手にしている。


 佐久間はあえて背後を取らせて紅を襲った。細く硬い土に紅は串刺しにされた。しかし、手ごたえはなく、水となって地面に消えた。それは本体ではなかった。佐久間の攻撃を先読みした紅はダミーを使い、本体は正面から攻撃した。佐久間はそれを阻止するために、土で壁を作った。紅の炎は壁に遮られ、足元は佐久間の土に捉えられた。紅は風になり逃れようとしたが、佐久間の土に包まれた。球体の土の中で、風となった紅が暴れまわったが、土の壁は風では破壊できず、水を使った。しかし、それでも土を溶かすことが出来なかった。


「捉えたのだね」

 そう言って、高一郎の隣に見知らぬ男が現れた。

中臣弘道なかとみ こうどうさん。来るのが遅いですよ」

 高一郎はその男を知っているようだった。

「こちらも、手が離せぬ用事があってね」

「用事とは?」

「私が古の者の三つの能力を水晶に封じていたのだがね、その封印が解かれそうになり、封じ続けていたのだが、先ほど、紅の力によって解かれてしまった。そして、その能力を紅が手に入れてしまい、すべての能力を持つ全能となった」

「しかし、あなたはこうなることを予測できていた」

「ああ。紅の母、私の娘は力が弱かった。妻が亡くなり、火を操る古の者が娘の椿を新たな依り代とした。しかし椿にはそれを縛ることは出来ず、私が椿の身体に封印を施したのだ。しかし、椿は先日亡くなり、古の者はその娘の紅へと依り代を移した。紅には強い力があり、古の者は強く縛られ、紅に支配されていた。紅はまだ精神的に幼く、強い力を持つにはあまりに危険だった。こちらで封印していた残り三つの能力は、決して解き放ってはいけなかった。それでも、紅は自らの力を制御しきれず、欲するがままに全ての能力を手にしてしまった」

「それも、古の者のさがなのでしょうね。紅が火を操る古の者を消し、自らが古の者と同じ存在になった。それがこの結果ということですね」

「ああ」

 二人の会話から、今井は中臣弘道が紅の母方の祖父であることを知った。


 佐久間と紅の戦いは続いていた。土に囚われた紅は、その中で炎を使い、水を使い、風を使ったが、それでも外には出られなかった。そして、土の能力を使い、硬く厚い土の壁を、それより硬い土のドリルで掘り始め、穴をあけて出てきた。

「おじいちゃんも来たのね。どうして、誰もあたしの味方にならないの? お兄ちゃんも、おじいちゃんも見ているだけだなんて。その男はあたしを殺しに来たのよ」

「紅よ。もう分かっているだろう。お前も古の者となった今、秩序を乱した者が受ける罰なのだと。悪魔の宿命に、我々は手を出してはならない」

 紅の祖父はそう言って、紅を諭した。

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