第16話
佐久間は執拗に紅への攻撃を続けた。襲い来る土を、紅は風を使い払いのけ、土を使い防御し、水でそれを溶かした。炎で佐久間を襲うと、土で防御されたが、紅は土を使いそれを崩した。全能である紅と、土使いの佐久間の戦いは互角に見えた。
「佐久間さんが勝つってこと、あるんですかね?」
今井が口を開いた。
「それは残念ながらない」
篠崎は無表情で言ったが、佐久間が負けて、存在が消えてしまう事に淋しさを感じているのかもしれなった。
「そうですか。佐久間さんが人ではないことは会った時から分かっていましたが、まさかこんなことになるなんて予想もつかなかった。僕は刑事ですから、佐久間さんが死んでしまったら、事件として扱うことになります。紅の殺戮も、捜査は手詰まりで、佐久間さんまで被害者となると、僕にはもう手に負えない……」
今井は意外にも佐久間が死ぬことを、それほど悲しむ様子もなかった。それより、人として、刑事としての任務に限界を感じているようだった。
「今井さん、あっさりしてるね。まあ、悪魔の
高一郎に言われて、今井は佐久間が語ったことを思い返した。
俺が
戦い続けている二人は、疲れた様子もなく、死闘というほど傷ついてもいなかった。お互いの防御力もあり、攻撃が効いていないようだった。そもそも、この戦いはなんのためなのか? 戦う必要があるのか? どちらも死なずに済む方法はないのか? 今井はそれを考えていたが、佐久間の語った言葉の中に、『それは人の進化であり、増え続ける人々の淘汰なのだ』とあった。これがその淘汰なのか? 古の者も強い者が勝ち、弱い者は淘汰されるのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます