第2話 豹変

 「その子」の家族構成は、前述した多少派手めの恰好をしている、母親、一流私立大学出身の父親、数歳上の長女のお姉ちゃんに、長男のお兄ちゃんといったものだった。


 「その子」の両親は陸上をやらせており、大会で取ったメダルや賞状といったものが、部屋中に沢山、並べてあった。


 「すごいね、きみ。」私は普通に痛く称賛し、「その子」も大変嬉しそうに、笑顔になった。


 こういうやりとりは、どこの小学生のコミティニティにも存在してたろうし、当然、不自然でも何でもない。


 ただ、「異変」はこの当時から、あったのだ。


 その「家族」のはす向かいの数十メートル奥に行ったところに、N君という、私の通っていた幼稚園のクラスメイトが住んでいた。


 今、思い起こしてみてもN君は普通の生徒であったと思う…いや、むしろ、どちらかというと、大人しい印象が強いくらいであった。


 「その子」と一緒に散歩だったか、冒険ついでに探険ごっこだったかをやったときに、そのN君の家の前を二人で通った。


 物凄い良い天気の日だったと記憶している。N君の父親はマイカーをホースの水を使って、一生懸命に掃除していた。


 私は幼稚園の運動会か何かで、N君の父親とは顔見知りだったと思う。なので、

挨拶あいさつ」がてら、


「なにしてるんですか?」と、声を掛けた。


 次の瞬間!!


「見りゃあ、分かんだろ!!」


 と、「その子」が激昂げっこうしその場は、こおり付いた。


 私は、何が起こったのか理解できなかった。


 なぜ、たったこれだけで「その子」は豹変ひょうへんしてしまったのか・・・。





 


 

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