第三話 アンとエナ
リーサンとリンカが一階の吹き抜けスペースに戻って来ると、そこには教会からの使いという姉妹が待っていた。
一人は若い女性で、もう一人は女の子だ。
姉の方は二十歳手前ぐらいだろうか。リンカの言う通りとても美人だ。青みがかった銀色の髪を肩に垂らし、瞳の色は透き通るような水色、唇には上品な笑みを浮かべている。ちなみに、リンカと違って胸はほどよく小さい。
妹の方はたぶん十二、三才ぐらいだろう。クリーム色の髪を頭のてっぺんでお団子にし、そこにピンク色のリボンを付けている。ほんのりと頬を赤らめながら、大きな金色の瞳でこちらをじっと見つめている顔が、何ともあどけなくて可愛らしい。
「やあ、はじめまして。ギルド本部から異動してきたリーサン=ハーキマークだ。気軽にリーサンと呼んでくれ。しばらく教会でお世話になるよ。よろしく」
リンカが姉妹の方を向き、ちょいちょいと手を上下させて二人にも挨拶を
「アンといいます」
少女はペコリとお辞儀をした。その愛嬌のある仕草にリーサンはまるで孫娘でも見るかように、目を細めてうんうんと頷いていた。
アンは真面目な面持ちで続けた。
「私はお姉ちゃんの妹で、十七歳くらいです。気軽にアンと呼んでください」
なんだかツッコミどころの多いアンの自己紹介を聞いて、リンカはブブッと鼻から変な音を出した後、ゴホンゴホンと咳をして誤魔化していた。
アンはどう見ても十七歳ではないので、リーサンはアンが言い間違えたのかと思った。しかし姉の方は何事もなかったかのように、自己紹介を引き継いだ。
「私はエナと申します。どうぞエナとお呼び下さい。えっと……十七歳です」
後半部分にかけて若干声が小さくなり、そしてなぜか目が泳いでいたが、まあこっちの十七歳は真実だろう。クール美人のエナは照れてもじもじしていた。
二人と握手を交わしていると、リンカが「あっ、そうそう」とわざとらしく口を開いた。
「言い忘れていたのですが」
「うん、何だい?」
「この子たち、ギルドのお仕事も一緒にさせて頂きますので」
「と、いいますと?」
「いやだから、教会でのお世話だけでなく、あなたのギルド任務も一緒にすると言うことです」
「えっ、そうなの?」
「はい、むしろそちらが本命です。彼女たちはライデン支部長直属のギルドシーカーなんです。今後は常に行動を共にしながらミッションをサポートします」
姉妹の方を見ると、二人とも澄ました顔でリーサンを見ていた。
リーサンは正直驚いた。二人とも、その外見からはシーカーだなんて想像も出来なかった。特にアンのような若いギルドシーカーなんて聞いたことがない。しかも支部長の直属だって? あんのエロジジイめ……。
ブツブツ言っているリーサンを無視して、リンカは最後に小さく咳払いをし、深々とお辞儀をしながらこの場を閉めた。
「それでは、よい休暇を」
これが、
第三話 アンとエナ ――完
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