がっきー

第1話 夢


最近よく夢を見る。

深く眠れていないからだろうか。



私の見る夢は様々だ。

登場人物は自分の知っている人達。

場所は過去住んでた場所や言ったことがある場所など。



起きた後、横にいる女に、どんな夢を見たか尋ねると、

いつも決まってメルヘンチックな回答だ。

「見たこともないお花畑で笑ってたよ」


お菓子の国や漫画の中の世界、行ったことも見たこともない場所が出るらしい。


(こいつは脳内お花畑なのか?)


いや、違う。

私が創造力のない人間だからなのかもしれない。


過去に起きた出来事や知人が登場し、

いつもの日常生活が過ぎるだけ。

現実主義が夢に投影されているのだろう。



中学までは神童ともてはやされ、

それなりの高校・大学を選び、それなりの企業に入ったサラリーマン。

上京し、それなりに楽しくは暮らしているが、

特に熱をもった趣味もなく、将来に漠然と不安を抱えている。

いつも思考がとっ散らかっており、

思い付きで始めたことは3日坊主で終わってしまう。



学生時代はお金がなかったが、時間はあった。

大学の授業などほとんど出席せず、

ゲームばかりして時間をつぶしていた。



自分はよくできた人間ではない。

ただ、田舎ではずっとなんでもできる人間だと思われていた私。

地元に帰ると、周囲の人は目を輝かせて話かけてくる。



「国立大の理系にいけるなんて本当にすごい」

「大企業に入って、さすがエリートだね」

「昔から、女には困らなかったもんな」



そういう話をされて嫌な気はしないが、むず痒い。

上には上がいるし、自己評価は周りのとの相対評価で決まる。

平均年収1000万越えの港区内では、しがないサラリーマンの肩身は狭い。



地元大阪でのんびり暮らす旧友のインスタは楽しそうだ。


高卒で地元就職して、今や立派に二児の父。

中卒だが父親の家業を継いで、今や社長のやつ。

27になった今も売れない地下アイドルとして踊る元カノ…


そういう彼らを見ると、ちょっぴり羨ましくなる。

隣の芝生は青く見えるとはよく言ったものだ。


東京に出て行った自分のことを羨ましく思う人もいるのだろう。



10代の頃のように毎日の成長実感がない。

人生経験が無駄についたのか、新しいものに触れる機会も少なくなった。



(なんかつまんねぇな。)


ここまで物事を悲観的に捉えてしまうのは何故だろうか。

老後2000万円問題、少子高齢化社会、実質賃金低下、デフレスパイラル…


日本の抱える問題のニュースを見ると、お先真っ暗に感じるのが今の若者である。

そして寝る前には、なんとなくの暇つぶしとしてYouTubeをだらだら眺める。


(YouTuberはいいな…これも経費にできるのか…)



しがないサラリーマンには人生の選択肢が少なすぎる。

誰かが作ったゲームで遊び、誰かが作ったインスタスポットに行く。

誰かが作ったルールのもと生き、誰か知らない人のために税金を納める。




そんなYouTubeを聴きながら寝落ちした次の朝には

毎日7,8個の夢の記憶が微かに残っているのだ。



夢の中では自由だ。

景色はカラー。視点は自分。自分の姿は見えない。

過去の経験のフラッシュバックのようなものではあるが、

その中での行動は、自分の欲望の通りに進められる。

クラスのヒロインを抱いて寝ることだってできる。



あの時こうしておけば良かったのに、という後悔が表れているのだろうか。

それとも、次のチャンスをこう動けば掴めるかもしれないという

淡い期待がそう行動させているのだろうか。


気づけば、毎朝8時は布団の中で考え事をしている。

今日の仕事のスケジュール把握と今朝見た夢の続きだ。


まぁなんとかなるか。


そうやって眠たい眼を擦りながら今日も出社する。


夢とは違う、現実で今を生きる。


Fin

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がっきー @gakki-0123

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