第18話 おさがり
私は長女として生まれているが、不思議と、おさがりに縁がある。よそ行きのワンピースなどは、買ってもらうより、おさがりのほうが多かった。提供先は、親戚である。メルカリなどがない時代、子供に、入学式や発表会、親戚の結婚式などのために買ったものの、その後、着せる機会がなく、もったいないから……ということらしかった。
小学校高学年の時にまわってきた、親戚のお姉さんのおさがりのワンピースは、グレードの高いものばかりで、本当に嬉しかった。子供のワンピースとはいえ、母親のセンスが反映されているのが一目でわかった。上品な焦げ茶色のビロードのワンピースは、「赤毛のアン」のマシューがアンにプレゼントしたドレスを連想させたし、白いブラウスとえんじ色のスカートをつなげたワンピースも洒落ていた。ブラウスに縫い付けられているスカートの吊り紐に、チロリアンリボンが使われていて、私は勝手に「アルプスの少女」の気分にひたっていた。黒地に水玉模様のワンピースはVネックで丈が長く、大人っぽく見えて嬉しかった。一番着やすいのが胸元のヨークがオレンジ色、他の部分は同系色の細かいチェック柄のワンピースで、学校にも着て行った。
意外なことに、グレードの高すぎるワンピースの提供先は、私の両親と仲の良い親戚ではなかった。本来は、もっと懇意にしている家の娘にあげたかったらしいのだが、その娘の体型がワンピースにあわなかったとか。私が着たあと、ワンピースはまた、別の親戚の家にいくことになる。
その後、中学生の時に、仲の良い親戚からまわってきたおさがりは、私が見ても、ダサいスカートが何枚もあり、心底がっかりしたのを覚えている。スカートの生地はしっかりしたものだったが、地味な茶色やベージュばかりだった。私は「赤毛のアン」で、アンが初めてマリラに洋服を縫ってもらったものの、デザインがかわいらしくなく、「私、気に入ったつもりになるわ。」と言った場面を思い出して自分を慰めた。スカートの他に、S女学院の制服の紺色のセーターがあり、私はK女子高校の生徒だったのだが、冬場はそのセーターを上着の下に着ていた。校則が緩めの学校だったので、何も言われなかった。
おさがりで一番嫌だったのが、高校生から大学生の時に、若い時、自分が着ていたからと、母親からもらったものだった。もともと、母親とは反りが合わないが、洋服の趣味も合わないと実感した。最近、あるテレビ番組で、南米の国の砂漠に洋服が大量に廃棄されている様子が映っていた。今は、おさがりにする以外にも、色んな方法があるだろうにと、なんともやりきれない気持ちになった。
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