ミリルアリア文書~森の乙女への親書より~

セレスティア王国歴四五七年 初夏の香りの月 

シルバーサイス領 領主代理 次女ミリルアリアから森の乙女への親書から抜粋


森の乙女よ 木々が笑い 鳥が歌う 緑の揺り籠に眠る乙女よ

どうかその澄みたる泉の様な瞳に 私を映してはくれないだろうか

その薄紅色の唇から 清らかなる旋律で私の名を呼んでくれないだろうか

私は 永久(とこしえ)に君の良き友人であろう

遠く遠く遥かなる時の先で この森が枯れようとも 誰もが乙女を忘れ 木々を切り倒し 鳥を狩り その泉を悲しみで溢れさそうとも 私は永劫の信愛を誓う

例えこの身が朽ち 土に戻り 魂が風に彷徨うとも 私は君のよき友人であろう

どうか私の願いを叶えてくれないだろうか

わが身を君の傍らに置き 我が領に森の恵みを どうか どうか



この文書は、元シルバーサイス領主の次女ミリルアリアが森の精霊に向けた嘆願書であるとされている

この頃のシルバーサイス領は、冷害による飢饉と流行り病によって壊滅状態であり、ミリルアリアのその身を対価に、領の守護を願ったものであると解釈されている

ミリルアリアは当時にしては珍しく、魔力が高く精霊との親和性が高かったとされていることから信憑性はあると考えられる

そして、この願いは、叶えられたと思われる

実際に元シルバーサイス領は現在に至るまで、この時以上の厄災は無く豊かな森の資源を享受していると言える

この文書が書かれたとされる頃より、ミリルアリアの消息は絶たれ、以後彼女の姿を見たものは無い

巷で囁かれている噂話として、今も森の最奥で眠りにつき、今も元シルバーサイス領を守り続けているとされている

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