結婚記念日

問いかける君の吐息が甘く香って、俺は季節のケーキの味を知った気がした。

俺が笑って口を開けて待っていると、君は少しだけ目を見開いてから微笑んで、小さなフォークでケーキを俺の口に運んでくれた。

予想通りのケーキの味と予想以上の恥ずかしさに、2人で顔を赤らめた初めてのデートを思い出した。


いくつもの季節を超えて、今では小さな娘たちが小さなフォークでケーキを美味しそうに頬張っている。

俺がアーンと口を開けると、娘たちはこぞってケーキを口に入れてくれる。

それを見ていた妻が「あなた、覚えてる?」と、イタズラな瞳と甘い吐息で問いかけてくる。


忘れるはずがない。「覚えているさ」と笑って小さなフォークでケーキを妻の口元に運ぶと、少しだけ目を見開いて笑ってからパクリとケーキを頬張った。


久々に感じる予想外の恥ずかしさに2人で見つめ合って大笑いすると、娘たちが私もー!私もー!と口を大きく開けていた。また2人で顔を合わせて笑い合い、娘たちの口に小さなフォークでケーキを運ぶ。


こんなに幸せな結婚記念日を、ありがとう。

いくつ季節が変わっても、いくつ歳を取ろうとも、ずっと傍に居てくれよ?俺の初めての彼女さん。

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