第8話 3 Days Ago

 莉緒は誰かに呼ばれた気がして目を開けると律の顔が目に入った。

「律……」

 と呟き起きようとした時、吐き気に襲われ、その場で吐いてしまう。

 律は慌ててキッチンに行くとキッチンペーパーとビニール袋を持って莉緒の元に戻る。

「ありがとう」

 莉緒は小さな声で律に礼を伝えると、吐しゃ物を片付け始める。

 律は吐しゃ物をいれやすいようにビニール袋の口を大きく開いて持つ

 莉緒は少しずつ状況を理解し始め、昨日はベッドにたどり着けずに床に倒れこむように眠っていたようだ。

 莉緒は今何時なのだろうと律に聞くと

「お昼過ぎた頃だよ」

 話しを聞いて、慌ててベッドの枕元に寄ろうとしたが、足に力がはいらなくて立ち上がることができない。

「莉緒、急に動かなくて大丈夫だから。会社に連絡もなく出社していない、って聞いてここにきたんだ」

 律がここにいる理由を説明する。莉緒はしゃべりづらさを感じながら、

「そうだったの……会社に連絡するね」

 そう言ってスマホをとろうとしたが、体に力が入らない。

 その様子を見て、律が枕元にあるスマホを持ってきて莉緒に渡したが、

「僕から連絡しておくよ」

 律の言葉に甘えることにして、ベッドに寄りかかり、ぼーとしながら律と会社のやり取りを聞いている。

「莉緒、連絡終わったよ。お大事に、って」

「うん、ありがとう」

「ベッドに入る?」

「うん」

 律は莉緒の体を支えながら立ち上がらせると、かけ布団をめくると莉緒を横たわらせる。

 ほどなく、莉緒は眠りについた。


 律は莉緒が寝入ったのを確認すると会社に連絡をして、今日休むことを伝え仕事の指示を出して連絡を終えると、音を出さないように部屋を掃除した。


 次に莉緒が目覚めると部屋が暗かった。

 部屋の灯りをつけようと入口まで歩こうとするが全身に力が入らなく、ベッドから転げ落ちてしまう。

 その音を聞いて律がすぐに部屋にきた。

「莉緒、大丈夫?」

「りつ……」

 莉緒は呂律がまわらない自分に驚く。


 とその時。


『莉緒さんはあと3日後に亡くなります』


 とスマホから聞こえてきた。


「りつ!いまのきいた?」

 呂律が回らないけど、律に確認すると、莉緒の顔を不思議そうに見ながら、

「何か聞こえたの?何も聞こえなかったけど?」

 律の顔を見ると、嘘を言っていないように感じた莉緒は、

「うそでしょ?なんできこえないの!」

 金切り声を上げた莉緒を落ち着かせるために、律はキッチンに行きコップに飲み物を入れて戻ってくると、

「これを飲んで落ち着いて」

 と莉緒の体を支えながら飲み物を飲ませる。

 莉緒は少しずつ飲むとだんだんと眠くなり、その場で眠ってしまった。

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