第10話 激アツな当落抽選

 銀玉は終盤の道釘エリアに突入した。傾斜角度が低いため、銀玉は今までよりも緩やかに転がっていく。数か所の零し穴を上手くジャンプしながら。


「人生は零れっぱなしだったな……」


 銀次はこれまでの歩みを総括するように呟いた。




 ――高校卒業後、フリーターとなった銀次は、様々な場所でバイトをした。スーパー、コンビニ、ガソリンスタンド、パン工場……。


 ただ、どれも長続きしなかった。何故なら、銀次は根気というスキルを全く身に付けて来なかったのだ。


 そして、銀次は最終的に自堕落過ぎて、若くしてポックリと。銀次の人生はハズレっぱなしだった――




「最後くらいは大当たりを引きたい――」


 負の感情の膿を出し切ったのか、銀次にもう迷いは無かった。




 道釘を通り過ぎ、ジャンプ釘で己の全てを賭けて、銀玉はヘソを目掛けて自身を羽ばたかせた。


「頼む! 入らせてくれ!」


 気持ちとは裏腹に、所詮は駄目な男の推進力。問題なくヘソに入るには勢いが少し足りなく、ヘソの左側にギリギリ銀玉の重心が乗っかるのが関の山だった。


 ヘソに入るか入らないかは五分五分。


 ――激アツな当落抽選だ。


鉄板てっぱんだあああ――」


 ヘソの左側に乗っかった銀玉は、一時の間、静止し、そして……ゆっくりと右下のヘソに吸い込まれていった。




 液晶、始動開始――。

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