第8話 堕落の始まり

 銀玉は寄り釘エリアへ。その上部に位置する、二本の釘で構成された縦穴を目掛けて、銀玉は必死で飛び込もうとした。


 ――だが、あえなく弾かれ、銀玉は寄り釘エリアの下部へと落ちていった。


「クソ! ワープに入れなかった!」


 銀次は顔をしかめて悔しがった。


 この縦穴はワープ口と呼ばれ、玉はここを通過すれば、ヘソ上部のステージに移動する。風車から道釘経由が通常ルートなら、ワープ経由はスペシャルルート――通常よりも高確率でヘソに入るルートだ。


 ワープに入れなかった――即ち、銀玉のヘソ入賞確率が大幅に下がったことを意味する。銀次が悔しがるのも当然の話だった。


「高校受験の時だってそうだった……」


 銀次は再び、トラウマスイッチをオンにしてしまう。




 ――銀次は中学生の頃までは成績優秀だった。野球への夢を諦めた銀次は、心機一転と、ある私立高校を受験した。理由は単純明快で、有名な高大一貫校なので、大学、そして人生もエスカレーターに乗れると思っていたからだ。


 だが、この有名私立高校への受験は不合格に終わってしまう。銀次は渋々滑り止めの高校に通い、堕落への道を歩み始めた――




「チクショウ! 嫌なことばかり――」

かいこう

 危機的状況が銀次に過去への邂逅かいこうを促していた。

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