第2話 博才
銀次が目的のパチンコ店に着いたのは、午前十時過ぎ。店は開店から数分後で、既にどの入り口でも入場可能になっていた。開店前の列に入り、並ぶ行為を面倒くさいと嫌がる銀次にとってその時刻は、入店する際のルーティンタイムだ。
銀次は店に入ると、顔見知りの店員や常連に軽い挨拶を交わしながら、パチンコの島中を早歩きで回っていった。その理由は単純明快で、
そんなトップランカーのお眼鏡にかなう台が見つかると、マジマジとその台を隅々までチェックした。そしてチェックを終えると、銀次はウンと頷き、その台の座席に腰を下ろした。
台と
――勝利した自身の姿。
二十万発以上の貯玉数を誇る会員カードを台横のICカード差し入れ口に投入し、銀次は打ち出しを開始した。すると、途端にスイッチが入り、何かに取り憑かれたかのように、デジタル始動口であるヘソへ向けての玉入れ作業に没頭していった。
「早く当たれ!」
台に念も送り続けながら。
打ち出しから一時間後、銀次は集中力を切らした顔で席を立った。銀次の体は、定期的にニコチン摂取という名のガソリン補給を必要としている。なので、店内の喫煙所で赤マルを嗜む。これも銀次のルーティンの一つだ。一本吸えば、補給完了。これで銀次は、一時間後までカラータイマーが鳴らずに済むのだ。
夜の八時過ぎ、銀次はこの日の稼働に切りを付けた。祈りが通じたのか、この日はある程度の『浮き』を呼び込むことに成功した。故に銀次は、勝利の達成感、一定以上の稼働を果たした充実感で満たされていた。
「今日は良い日だったな。明日は休みにして風俗でも行くか!」
と浮かれた心持ちで、未だ店に残っている常連に別れと激励の言葉を掛けてから、銀次はルンルンと店から出ていった。
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