#39 戦況報告



 教室でシオリちゃんへ絶交を言い渡した後、走る様にして学校を飛び出し家路を急いだ。


 駅で電車を待つ間「学校側はいじめとして対応。 シオリちゃんとは無事絶交できたよ。 17時頃から熱湯バット」とカビゴンへメッセージを送った。


 帰りの電車でクラスのグルチャをチェックすると、案の定大炎上だった。

 シオリちゃんも松田くんも、もうクラスでの居場所は無いだろう。



 帰宅してビデオチャットの準備をしながら部屋着に着替え、直ぐにカビゴンと会話を始める。



「学校側は結構混乱してる様に感じたよ。 村上先生は担任外されるって。松田くんたちは昨日のグルチャで色々暴露されたせいだと思うけど、3人とも今日休もうとしたみたいで強制的に登校させて取り調べだって。 多分親同伴で呼び出しだろうね」


『なるほど。 証拠が揃ってるから最初から確定扱いで呼び出しになったんだろうね』


「うん、多分そう」


『村上はどんな様子だった?』


「それが朝から一度も見てないの。 朝のHRから教頭先生が代わりに来てて、しばらくそのまま担任代行するんだって」


『そうなんだ。 ってことは昨日の夜の段階で学校サイドの村上への断罪が始まってたのか』


「そうだろうね。 それとシオリちゃんだけど」


『うん』


「朝からずっと顔色悪くて、カビゴンのことを話かけてもずっと上の空だった。 お昼もほとんどまともに食べれてないみたいだったし」


『昨日のグループチャットをシオリも見てるってことか。 それで浮気証拠投入後は?』


「放課後になって丁度帰ろうとしてた時で、シオリちゃんと「帰ろっか」って言ってたタイミングでカビゴンの爆撃が始まったのね。 私は知ってたから直ぐスマホ出して確認してて、シオリちゃんはまだ気付いて無かったから、例のキス写真を表示させてシオリちゃんに突き付けて「どういうこと?」って問い詰めたの」


『ほうほう』


「シオリちゃん、その場にヘタりこんじゃって「しらない」って、でも「知らない訳ないでしょ!」とか「私が浮気嫌いなの知ってるでしょ!」とか、あと「春日くんの親だって最近浮気が原因で離婚したばっかだよ! なんでこんなに酷い仕打ちが出来るの!」って教室中に聞こえる声で責め立ててみた」


『え?チカ郎、大声出したんだ』


「うん、頑張ったよ。 教室にまだそこそこ人残ってたから、アピールも兼ねてね。 あとは最後に「もうアンタみたいな糞ビッチ、顔も見たくない。 二度と話しかけないでね」って絶交して来た」


『そっか、ご苦労様。 ありがとうね』


「ううん。 最初からこの予定だしね。 それでカビゴンの方はどうなの?」


『シオリには爆弾投下の直後にメッセージ送ったよ。 最初に撮影した松田とのキス写真添付して「裏切者」って一言だけ添えて。その後しばらく様子見たけど、既読つかないままだね。スマホ見る余裕ないのかも』


「確かにそうかも。 私とのやり取りからまだ1時間ちょっとしか経ってないし」


『あ、あとウチの親にも朝イチでメッセージ送っておいた。 母親からは「わかった。何か困ったこと有ったら相談してね」って。 父親からは「一度連絡寄こせ」って、それで電話掛けたら仕事中だけど出てくれて、事情話せっていうからシオリの浮気とその相手から嫌がらせが続いてることと、担任に相談したけど取り合って貰えなかったことを説明した上で「自分でケリ付けたいから、2~3日は口出さないで欲しい」ってお願いして、一応は「わかった」って理解して貰えた』


「へ~、でももうほとんど終わったような物じゃないの?」


『もう少しだね。 あと少しだけ追撃して終わりにするつもり』


「追撃?」


『うん。 まぁ、意味ありげに言ってるけど、大したことじゃないよ』


「そうなんだ。 それで週末は家に戻るんだよね? その後はどうするの?」


『夏休みまでこのまま休むつもり。 僕の場合は被害者だから、無理にでも学校に来いとは言われないでしょ』


「そうだね。 来たところで学校も困るかも。 何せ優等生だと思ってたら学校の対応不備に怒って教育委員会とかそこら中に通報しちゃうような生徒だし」


『なんか酷い言い草だなぁ』


「そんなことないよ? 私はカビゴンのこと凄くリスペクトしてるよ。 カビゴンの実行力ってホント凄くて、実際に今日の学校の様子見る限りじゃ、カビゴンの作戦通りの効果出せてるし。 あ、そうだ。 私も追撃しようか? 中学の時の友達とかに拡散とか」


『そこの判断は任せるよ。 でも、確かに学校外の友達連中には早めに情報流した方が良いかもね。 今はそれどころじゃないだろうけど、その内にシオリや松田が適当な言い分とか嘘情報広めたりしかねないし』


「あーそれあるかも。松田くんならやりかねないかな。じゃあ先手を打って早速今から拡散しちゃうね」


 そう断ってから、スマホで中学の時の友達とのグルチャを開いた。

 このグループチャットは中学の時の仲良しグループのもので、シオリちゃんも登録メンバーだ。


 シオリちゃんが二股をしていた事、その相手が松田くんであること。

 もう一人の本命彼氏に松田くんが逆恨みで嫌がらせしたせいで、相手怒らせてシオリちゃんも松田くんも高校では再起不能なまで追い詰められていること。

 それを証拠の画像数枚と一緒に「私はシオリちゃんと絶交した」と一言添えて流した。


 私とシオリちゃんが親友でグループの中でも目立って仲が良かったからか、グルチャではみんな凄く驚いた様子で直ぐに反応が返って来た。

 色々質問が来たけど「私も詳しいことはわからない。でもウチの高校でかなりの騒ぎになってるよ」と答えて、グルチャを閉じた。


 同じことを、中学の時の部活のグルチャでもやった。

 まぁ、コッチの方はほぼ使われていないし、誰も見ないかもしれないけど、交友関係が狭い私にはこれくらいしか出来なかった。






 それから、後で聞いた話では、この日の夜にカビゴンがシオリちゃんへ送ったメッセージに既読が付いたらしいけど、返事は無かったそうだ。


 カビゴンが言うには

『シオリは僕が甘くないのを分かってるんだと思う。ここ最近そういう風に接して来たし。 そこに昨日からの僕の行動見て、相当怒ってるんだと分ったんじゃないかな。 だから返事したくても怖くて出来ないんだと思うよ。 あとは僕が色々握ってるのをシオリ自身も分かってるから、これ以上怒らせるのは不味いと思ってるか完全に怯えてるか、かな』と分析していた。



 だから、弱みって何をしたのよ!?

 と口から出かかったけど、怖くて聞けなかった。




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