5.鑑定する1
三人と話し合った一週間後、私達は再び謁見の間に呼び出された。
そこで魔王討伐に協力してくれるか、否かを決める。
事前に決めていた通り、三人は王国に協力する意を示した。
そして私は────
「三人がやるなら、やる」
王様にそう言った。
今追い出されるのは、ちょっと困る。
それなら表面上は協力する形を見せて、クロ達が迎えに来てくれるまでここで待つことにした。
早々に追い出されて近くの森に居たほうが、クロ達も動きやすいんじゃないかって思ったけれど、私はここに残ることを優先した。
理由は、ベッドがふかふかだから。
どうせ寝るなら寝心地が良いほうがいい。そのためには少しくらい面倒なことを我慢しても良いかなって思ったから、私は『三人と一緒なら』という条件で答えを出したんだ。
本当は、動くなんて嫌なんだけど……仕方ない。
訓練の期間は、一年。
クロ達のことだから、一年も経たずに私を見つけてくれると信じている。
だから、今は我慢。
「協力、感謝する。初日も言ったが、我々も助力を惜しまない。必要なものがあれば遠慮なく言ってくれ。なんでもいい。我が国が全力で支援すると約束しよう」
…………必要な、もの。
「ん」
手を挙げる。
早速、それを利用させてもらう。
「ベッド、もっと良い物を頂戴」
「……は?」
「ベッド、もっと寝心地が良いもの……欲しい。一番良い物を求む」
この城のベッドは質が良いけれど、ガッドさんが作ってくれたベッドの方がまだ何倍も寝心地が良かった。ドワーフ族が本気で作ったものだから格が違うのは当たり前だけど、それでも近いものを私は求める。
「その、だな……レア殿? 必要な物というのは、寝具等のことではなく」
「でも王様、さっき『なんでも』って、言った」
「いや、武器とか装備とか。そういうものを欲しがるとばかり……」
「約束……守ってくれないの?」
「……………………国が誇るドワーフを集結させ、最上級の寝具を用意させよう」
──よし。
これで目標の大部分は達成した。
「他はどうだろう? レア殿のようにとは言わないが、欲しいものがあれば早いうちに頼む」
「それじゃあ全員分の武器と防具をお願いします」
「うむ、すぐに用意させよう…………だが、その前に勇者殿らの適性を調べたい。──ロマンコフ。例の部屋に案内を」
「──ハッ。勇者様、こちらへ」
例の部屋? ……なんだろう。
適性を調べるって言っていたけれど、それに関係してるのかな?
ロマンコフさんの案内に従って、私達は謁見の間を移動する。
私はまだ足が不自由な設定があるから、今はメイドさんに荷台で運んでもらっている。
でも、下が固くて乗り心地はあまり良くない。
そういえば棺桶に毛布があったような気がする。
ここで棺桶を取り出したら吸血鬼だってバレちゃうから、あとでこっそり取り出しておこうかな。
「ここです」
部屋に入る。そこは私達が最初にいたところに似ていた。
ちょっと薄暗くて、とても広いとは言えない部屋。中央には綺麗な水晶みたいなものがあって、そこから変な魔力を感じる。
「これは鑑定石と言って、その人に適した職業を示してくれます」
「職業? 勇者が俺達の職業じゃないんですか?」
勇者って職業なんだ……。
そういうことを何一つ知らないけど、どうしてハヤトの方が詳しいんだろう?
異世界の知識ってやつなのかな。
でも、全然違う世界のことなのに、なんで知識があるんだろう。
……うーん、分からないや。
「勇者にも種類がありまして、剣が得意だったり魔法が得意だったりと勇者によって適性武器が変わるのです」
ああ、だから王様は、何の武器がいいかを聞かなかったのか。
剣を希望したのに、後になって「実は魔法の方が得意でした」って言われたら困るから、この鑑定石? の結果を見てから、適した武器と装備を作るつもりなんだ。
「触れた際に若干の倦怠感がありますが、すぐに治るので結果が出るまでは手を離さないように。……では、誰から鑑定しますか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます