6.鑑定する2
「それじゃあ、俺からやろうかな」
一番槍は、ハヤト。
恐る恐ると言った感じで水晶の上に手を乗せて、しばらくするとハヤトの目の前に青い文字が浮かび上がった。
それを見た大人達がざわめく。
「おおっ、さすがは勇者様。全体的に能力値が高く、鍛錬を積んできた一般騎士を遥かに超えています。最初がこれなら今後の成長が楽しみですな」
鑑定石は触れた人の能力? を数字にして表してくれるみたい。
他人の情報に興味は無いから見ないけれど、この鑑定石の結果から今後どのような訓練をしていくのか決めるのかな。
大人達の会話を聞いた感じ、ハヤトは特に筋力値が高いみたい。
だから、しばらくは剣術や武術とかの近接戦闘に集中して訓練するんだって。
ちなみにミカとユウナは魔力が高いみたい。
でも、魔法にはそれぞれの属性に適性があるみたいで、二人とも魔力値が高いからって同じ魔法を扱えるとは限らないとか。
魔法、か……。
私は何が得意なんだろう。
動くのは嫌だな。この世界で何が一番嫌いかと聞かれたら、私は迷わず「運動」って答える。
今まで動くことを極力避けてきたから、今回も絶対に動きたくない。大嫌いな運動をするくらいなら、魔王討伐を拒否して追い出されたほうがマシだ。
それなら、やっぱり魔法かな。
魔法と言えば結界のカイちゃんがいるけれど、元気かな。
あの子は先日の戦いで大活躍をしてくれた。カイちゃんが街を守ってくれなかったら、私達側の被害はもっと酷いことになっていたと思う。だからお礼を言いたかったのに、言いそびれちゃったな……。
「では最後に、レア様。お願いします」
「ん、わかった」
どんな数値が出るんだろう。
内心ワクワクしながら水晶に触れる。
「……ふぇ?」
ハヤトもミカもユウナの時も、水晶はやんわりと光るだけだった。
でも、私が触れた途端に水晶は激しく光り出して────ピシッ、という音がした後、水晶は粉々に砕け散った。
……なにが起こったの?
予想外のことに私は驚いた。
先に言っておくけれど、私は何もしていない。
水晶に触ってと言われたから、その通りに触れただけだ。
「え、っと……ごめんなさ、ぃ……?」
一応、謝っておく。
悪いことはしていないけれど、言っておいたほうがいいかなって思ったから。
「何が起こったのだ?」
「わ、分かりません。私には何とも……水晶が砕けるなんて、今まで無かったものですから」
今まで水晶が砕けたことは無かったみたい。
だから大人達もびっくりしていて、水晶を凝視している。
「砕ける瞬間、眩い光だけが見えた。……もしや、レア殿の能力値が高すぎたのか?」
「それはあり得ないでしょう。かの英雄ですら水晶は割れませんでした。いくら勇者と言えど、彼を超えられるとは思えません」
また新しい単語が聞こえてきた。
『英雄』ってなんだろう。とにかく凄い人なんだってことだけは分かったけれど、ハヤト達みたいな勇者とはまた違うのかな?
でも、今はそんなのどうでもいいか。
「一先ず、この件は後回しにしよう。ハヤト殿は剣術、ミカ殿とユウナ殿は魔法を。それぞれ学んでもらう。…………レア殿は、何か興味のあるものはあるだろうか?」
「ん、それなら魔法、勉強してみたい」
「分かった。ハヤト殿には王国騎士団長を。それ以外の三人には王国魔法師を付けさせよう」
好きなものを学べるなら、魔法がいい。
そう考えると水晶が割れて良かったのかも。これで大嫌いな運動とか言われたら、ショックでお部屋に引き篭もるところだった。
これが結果おーらいってやつ?
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